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高橋真梨子の世界

CONCERT の CONCEPT

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(C)Victor Entertainment
(C)THE MUSIX 1996
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コンサートにコンセプト (モチーフ) は必要であると私は思う。もちろん真梨子さんが元気に笑顔で歌ってくれていればそれでよいのだが、真梨子さんとの関わりに意味を持たせたいという思いが強い分だけ、余韻を残しておきたいのである。

最近ファンになった方にはわかりづらいと思うが、もともと真梨子さんのコンサートには、アルバムのツアーとしてのコンセプトがあった。幕開けの真梨子さんの言葉に「今回は水をテーマにした曲を集めてみました」というようなコメントがあったものだ。
おそらく2000年髙橋真梨子プロジェクト以降であるが、そのコンセプトがつかみづらくなっている。もちろん、真梨子さんの曲も300曲以上あり、私はそのどれも歌ってほしいのであるが、そうした歌ってほしい名曲を組み込むとなるとなかなか焦点が定まらなくなるのも事実である。

もとより発表された楽曲には、その歌で表現しようというseenがある。
髙橋真梨子というシンガーは、そのシーンを、自己の感情移入を極力押さえて彼女の天性の歌唱法で、より客観的にそしてまた無機質に表現してきたヴォーカリストである。彼女に発せられたその詩の世界は、客観的でいわば没個性の世界となるがゆえに、受け手である聴衆ひとりひとりによって多様に変化していくことができる。だからこそ多くの年代層から支持されるのだと思う。
いわばその人の生き方、人生経験、そして今考えていること、心境など様々なファクターで、髙橋真梨子の描く世界は、幾重にも変化していくのである。
つまり、髙橋真梨子の世界は定型化された「ひとつの世界」ではなく、受け手であるわれわれの心の数だけ世界が広がっていく、いわば自分が感じ取った世界なのだ。


「私たちの心の中に、髙橋真梨子がいる。」そんな神秘的な世界でもある。

実は忘れてはいけないことがある。
「まり子」さんは、「髙橋真梨子」を演じ自然体であることを演じてきた孤高のシンガーなのだ。
しかしどうであろう・・・・・・最近の真梨子さんは、ファンのみんなと愉しむコンサートにしようとしている。だからコンセプトは後付でよいのかもしれない。今の真梨子さんは自然と笑顔も出る。その笑顔が輝いている。それは大変僭越であるが、肩の力が抜けている本当にうれしそうな笑顔にも見える。

真梨子さん自身が、「髙橋真梨子のコンサート」「髙橋真梨子の世界」を構成する一員として役割を楽しく演じておられるように感じ取れるのだ。

だからこそコンサートのラストで、真梨子さんを、コンサートを「構成した」ヘンリーバンドのメンバーが囲んで幕が閉じる時、私は真っ先に立ち上がり拍手を贈る。それは、私自身も受け手としてそのコンサートを構成してきたからに他ならない。
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今後も、私が感じ取ったコンセプトで髙橋真梨子の世界を表現したい。時間と空間を共有した者にしかわからない真梨子さんからのプレゼントだからである。そして私にしか表現できないことだからである。

2020/07/10改訂 (MDF音楽館2007収録分記事)

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