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第26回日本レコード大賞・アルバム大賞

1984/12/31 帝国劇場 (C)TBS

年末といえば、TBS日本レコード大賞からNHK紅白歌合戦への歌手の移動が行われていたのが歌謡界である。

日比谷の帝国劇場から、渋谷まで15分。大賞歌手は、紅白のオープニングに間に合わないこともあった。

日本レコード大賞の司会といえば、高橋圭三氏であった。

参議院議員に77年になってからは出演は減ったものの看板司会者であった。

84年は大賞のプレゼンターを務めている。

84年の司会は、NHKの朝の顔、退職した直後の4月からTBSのモーニング番組の司会を務めた森本毅郎氏であった。

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放送を再現してみる。

「今年新たに設けられたアルバム大賞を発表いたします。まぁ、今年のレコードの売上げ状況を見ますと、アルバムの売上げの躍進が大きな特徴として挙げられます。シングルの売上げをアルバムが超えたというデータもあります。アーティストの皆さんにとっては、大変意義のある賞だと思います。

それでは、第26回日本レコード大賞アルバム大賞に、去る11/28優秀アルバム賞として選ばれました10作品をご紹介いたします。

(放送ではアルバムジャケットと収録代表曲が流れながら紹介される。サブアナウンサーが読み上げる。)

大滝詠一  EACH TIME

竹内まりや ヴァラエティ

佐藤 隆  男と女

小林麻美  Cryptograph ・愛の暗号

チェッカーズ 絶対チェッカーズ

河合奈保子 DAYDREAM COAST

高橋真梨子 Triad

サザンオールスターズ 人気者でいこう

佐野元春  VISITORS

松任谷由実 ボイジャー

以上10作品です。

そして、12/17にアルバム大賞が決定しております。それでは.....、第26回日本レコード大賞 第1回アルバム大賞を受賞されましたのは、高橋真梨子さんが歌われました『Triad』に決定いたしました。」

真梨子さんがステージ右手から現れる。

サブアナウンサーが、「ソロになって6年。地道なアルバム制作とステージ活動が実を結んだといえましょう。」と添える。

早速、当時の看板女子アナウンサーの三雲孝枝さんがインタビューする。

「おめでとうございます。高橋さんにとって、音楽活動の中でアルバム作りはどういうものですか?」

真梨子さん、「はい、私にとっては一番好きなことですし、そもそもソロになったのも、アルバムを作ろうってソロになったので、私にとってとってもいいことだと思います。」

「おめでとうございます。」

「それでは、表彰は、日本作曲家協会会長、日本レコード大賞実行委員長 吉田 正より行います。」

​吉田氏ががっちりと握手をし「おめでとう」とほほ笑んだ。

三雲アナが、「高橋さん、素敵なゲストの方がお越しくださいました。立木義弘さんです。」

立木氏「おめでとう」

三雲アナ「どういうご関係なのですか?。」

立木氏「まぁ、親子みたいなものですね。ときどき六本木で一緒に飲んだり、...彼女のアルバムのジャケットを撮影したりという感じですね。」

三雲アナ「どんなところが魅力ですか?」

立木氏「そうですねぇ、大人のようで子供っていうか、女の子のようで男の子みたいなところもあるし、

何より歌はうまいし....」

三雲アナ「高橋さん、いかがでしよう?」

真梨子さん「えっ..今はよくわからないです。」

立木氏「落ち着いてね、慣れてないステージだから(笑)」

三雲アナ「それでは、受賞されました『Triad』の中から、2曲歌っていただきましょう。」

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1984/12/31 
帝国劇場 (C)TBS
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1984/12/31 帝国劇場 (C)TBS

当時のヘンリーバンドは、今以上に可能な限り音源を使わず、生音である。歌唱した桃色吐息は、1コーラスのショートversion。いつも通り、緊張することなく存分に歌ってくれる。そして、斉藤久美さんのバックグラウンドボーカルが厚みを出していい感じである。

そして、続けてなんと「HEART」を歌唱したのだ。

イントロが流れた時、帝国劇場がコンサートのラストシーンの空気感に代わる。物語を語るような落ち着いた入り方。声を張り上げた後のほっとした微笑みの瞬間の変化がとてもぞくっとする。カメラも意識していない。

本当に嬉しいという心あふれる歌唱である。

しかも間奏もエンディングもしっかりと演奏する、生放送のフルバージョンである。地上波では特別の扱いである。

会場は、レコード会社・歌手・関係者が40%占める中での歌唱であった。

それは、アルバム作り、そしてステージという真梨子さんのやりたいことができるようになった瞬間でもあった。

そして、歌唱が終わり、司会席にカメラが向く。森本毅郎氏の「いゃあ..私は歌が好きでほんとによかったなと思います。もう一度高橋真梨子さんに祝福の拍手をお願いします。」の声に、真梨子さんはカメラ目線で微笑んだのだった。

それから真梨子さんは、いつもの通り、普段通りに落ち着いて、渋谷へと向かった。

ファンは、その2時間後、沢田研二さんの「アマポーラ」の歌唱のあと、真梨子さんに驚かされることになる。

それは......紅白を見た方には、お分かりのはずである。

(2020/08/01記載)

ON THE STAGE
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