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高音 original

20160724 東京国際フォーラム

座席の女神様は、またしても私に試練を与えている。それは予想されたことではあるが、真梨子さんまで45メートル。舞台全体が大きなスクリーン、ポツンと立った真梨子さんを見ながら、左右のモニターで表情を眺める。それは、コンサートに参加したというより、見ている感覚。そして前方とは違う会場のノリの温度差の中で傍観者として後方から見ているという感覚である。

結局、客観的に真梨子さんの歌唱を聴いてしまうことになる。酔いしれるという感じではない。

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♪「ジャングルに夜の帳が下りるときに

 鳴り響く太鼓の音のように

 壁にかかった荘厳な時計が

 時を刻む音のように...........」

いきなりであるが、これが何の曲がわかる方は少ないだろう。

真梨子さんがかつてのコンサートでスローバラードで歌い上げた「Night & Day」の本来の出だしの部分である。原曲はかなりアップテンポで軽やかな曲である。

真梨子さんが歌ったときは、この部分はなく、ピアノでゆっくりとスローに歌い上げる。

ここ数年カバー曲の編曲は、高橋真梨子の世界になるように、真梨子さんが歌いやすい、そしてメゾソプラノの音質が生かされるような編曲になっている。

「星の流れに」「ワインレッドの心」「SUPER STAR」そして「襟裳岬」等々..................

当然、コンサートでの声の伸びも歌い上げ方も絶品である。

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真梨子さんは、オリジナルは原曲のKEYにこだわり続けている。それが、彼女のsingerとしてのありかたである。だからこそ

真梨子さんは、今の年齢での歌い方で聴いてほしいとも語る。

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さて、真梨子さんまで45メートルである。客観的に聞いてしまう。府中の森芸術劇場では、明らかに音響操作の面で、最初の3曲は音がこもり、ぼわっとしていた。今日は、最初から、高音部もクリアーである。透明感もある。空に突き抜ける。まるで高音部を強調したイコライジングであるかとすら感じた。

もちろん、カバー曲の伸びもよい。心象風景も描ける。

しかし、肝心のオリジナルが何かおかしい。

「ごめんね」の低音部が響かない。「君と生きたい」が苦しそうだ。「フレンズ」はKEYの幅が上下差が少ないから、安定していた。しかし、「for you...」の語り掛けの部分が、言葉を置きに行っている。ピッチか合わないところがあった。

命を削っているから、今の歌い方だからということとは違うと思う。明らかにカバー曲と差があるのだ。

もともと真梨子さんの倍音の声は弦楽器の音色である。

簡単に言えば、発声した一つの音に対して一人でハーモニーするかのように音が幾重にも発せられている。今日は、その音が、高音部の方に偏って響いている。低音がハーモニーされていない。響いていない。

つまり、お腹に響かず、胸から上、強靭な声帯から発せられた歌唱のような感じがしたのだ。しかし口先で歌っているのとは全く違うものである。

なんなく、ゆとりも、間もあまり感じられず、高音部の透き通ったバラードになっていた。

おそらく、真梨子さん本人が一番感じられていることである。

痩せていて力が思うように入らないのだと思う。

​だから、とびっきりの笑顔を見せてくれていることが何か申し訳なく見えてしまう傍観者の自分がいたのである。

真梨子さんは、最期までステージに立ちたいとお話になる。

それは、体力的にという以上に、ヴォーカルの道を究め続けたいということであろう。だから、初めて来た人に、お茶目にもっと早く来てほしかったとも語る。

80年代の真梨子さんの倍音のパワフルな歌唱を知っているからこそ、今の(苦しみながら歌うような)繊細な歌唱もよくわかる。

私は、真梨子さんが心象風景を描く歌唱をしてきたことをとても嬉しく思っている。だから、カバー曲がそうであるように、真梨子さんに無理なくシーンを描いてもらえるように、KEYを下げてオリジナルを歌ってもらってもよいと思っている。

それで、一日でも長くステージに立ってくれるのなら、多くのファンは納得するはずである。

そんなことを書きながら、でも原曲にこだわるのが真梨子さんだよなと思う自分がいる。

ああ泣かないで MEMORIES

私はもっと 強いはずよ

ステージで歌っていない、「瞳はダイアモンド」が何か聞こえてきた感じがしたコンサートであった。

(C)THE MUSIX   
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