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シルエットの存在感 20160823 相模女子大グリーンホール

出張から戻ったサラリーマンが、ジントニックをオーダーする。いろいろな会話が弾む中で、グラスの中の氷がかき混ぜられる音がする。

この氷ってもしかしたら・・・・・・・

1982年アルバム「Dear」は、真梨子さんがプロデュースに参加して仕上げた自信作である。

「for you...」が収録されている。「Tear」もある。

そして「小さなメタモルフォーゼ」がこのアルバムをさらにお洒落にする。

星の氷を入れた カクテルを飲めば

きっと女神になれる 誰かが囁くから・・・

失恋した主人公が明るい恋愛をしたいという思いが込められている。

34年後の2016年、真梨子さんは、星が散りばめられた旗の国アメリカ合衆国ニューヨークで、自由の女神に再会をする。

 

カクテルを飲んでいるのは男性で、立場も曲の風景も全く違うのに、真梨子さんのその後のシーンを連想させた。

星の氷が入ったなと感じさせるオープニングであった。

そう、真梨子さんはすでに歌の女神になっているからだ。

いろいろな素材をかき混ぜるからカクテル。

女神である真梨子さんは、さまざまな色のカクテル光線・パステルカラーのライトに照らされ包まれていく。

その美しさがなぜ美しいのかといえば、

実は、真梨子さんがそのライトにあたらず、瞬間的にシルエットのみになるシーンがたくさんあるからなのだ。

シルエットだけで、高橋真梨子の存在感がある。

それは、しっかりとした間があって、余裕のある低音の響きと高音の透明感のバランスがある、あのヴォーカルがあればこそ出てくる存在感なのだ。

今年は、「フレンズ」である。綺麗な宮原さんのイントロから始まり、ラストのシーンで真梨子さんが、照明から外れてシルエットになったまま立っている。

これが高橋真梨子である。

だから、「君と生きたい」と「for you...」の終わり方は本当は残念なのだけれど、SET LIST上あえてそうしているのだろうと思う。

 

星の氷のカクテル。

カクテル光線。

そして歌わないシルエットの真梨子さん。

 

こんなイメージでじっくり聴けるコンサートであった。 

​(2016/08/25)

 

「高橋真梨子」は少し意地っ張りで、一本強い筋の通ったシンガーである。

だから、40年以上真梨子さんを応援してきたとも言える。

オープニングの真梨子さんの笑顔を見た瞬間、今日は大丈夫だなと直感した。髪をアップにした真梨子さんのほっぺたが、私の知っているあの30年前の真梨子さんに似ていたからだ。まだまだ首元の細さは気になったが、8月のこの期間で休養も取れたのだなと感じさせる笑顔での登場だった。


3曲を聞いてその直感は当たった。
日本でいや世界で一番真梨子さんのことを書き綴っている私は、真梨子さんの作品を絶賛するし、同時に厳しいことも書いてきた。
7月のフォーラムのコンサートでは、歌いやすいカバー曲の編曲に対して、オリジナル曲の出来が良くなく、高音で透明感があるのに、真梨子さん独特の倍音の声質の低音部分の響きが悪いこと、音程が乱れていること、言葉を置きにいっていることなど指摘した。そして心象風景がうまく描けないのであれば、オリジナルのKEYを下げることも選択肢と前回のレポートで書き記した。

本日の真梨子さんの様子、それは、つべこべ言わずこの歌声聞いてという感じで、「あの強気で健気な一直線な高橋真梨子のヴォーカル」が再現されたのだ。

カバー曲は当然素晴らしい。オリジナルも、丁寧に低音を響かせて意識して表現してくれていた。
そして、同じく指摘してきた宮原さんのピアノとの呼応関係、息遣いの間の微妙なスロー感が、今日は特に感じられた。

「OLD TIME JAZZ」は絶品。一晩だけなら の「ん」のファルセットが可愛い表現。低音の響きとゆとりが素晴らしい仕上げ。
「君と生きたい」のイントロのほんの0.5秒位のスローな入り。「フレンズ」の、綺麗なイントロも入りがややスロー。そして、「for you...」のイントロも真梨子さんの息使いにゆとりが感じられ、4分35秒の編曲が38秒くらいの感じで歌い上げられた。

ほんのちょっとの間が、弦楽器の音色の声質の低音を響かせて温かみのある広がりを生み、そして緊張感ある高音部へスムースに移行させていく。だから、高音部も力まず、苦しそうに歌わずストレートに天空に向かって伸びていく、あの真梨子さんの歌唱であった。

ご自分に厳しい真梨子さんでもその仕上がりの良さに納得されていたと思える笑顔だったと思う。

9/16のカーネギーに向けて、着実に整えてきたプロの姿がそこにあった。

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