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そして for you...
2016.10.01 神奈川県民ホール
座席の女神様が私に与えてくれた席は、1-3-49であった。NHKホールを例に作られた神奈川県民ホール。この座席は、最前列と2列目の中間の一番右側である。一人だけぽつんと座る席で、真梨子さんまで10メートル。角度は20度くらいであろうか。当然グランパは3メートルのところで笑顔を見ることができる。昨年の川口、今年のよこすか同様、大変申し訳ないくらいのプレミアムな座席である。
舞台のヘンリーさんは見えない。
その代わり、真梨子さんの横顔がよく見える。
この座席に座った意味がある。
真梨子さんのシルエットが語る存在感の体感である。
スポットライトが、綺麗に直線に三角形を描いて、真梨子さん全身を照らしていく。そして、照らさない時の真梨子さんのシルエット、もうひとりの影の真梨子さんがぼやっとしながら、しっかりと存在感を漂わせて、ステージに立っている。
体重が40Kgを切り、痩せた真梨子さん、そしてあのコンサートのあと全くの別人であるかのような、疲労困憊の真梨子さんの、神秘な姿がそのシルエットの中にある。
特に「フレンズ」は、アップテンポの曲の後の少しの時間をおいて、宮原さんがその日の真梨子さんの息遣いを感じとって、スローにイントロを奏で始める。
アップテンポの曲の余韻が会場を包む中、少しの間をおいて別の空気感を導いていく綺麗なイントロ。
聴き慣れた曲だからこそ、この空気感は新鮮だ。
そして、万照さんの吹く暖かい間奏のメロディ。
秋の夕陽の中せつなく歩いた街路樹の町並みや、そんな学生時代の懐かしい時間を、なぜか想起させてくれる。
その中にシルエットの真梨子さんがいる。
相模大野の時も、真梨子さんから12メートルほどであったが、そのときはマロさんを囲むアクリルボードに真梨子さんの後ろ姿が写っていた。
そこにも、もうひとりの真梨子さんがいた。
かつて、宮原さんが真梨子さんを称して、背中が歌っていると語ったことがある。この後ろ姿も、背中で歌う真梨子さんを体感できる、貴重なシーンであった。
しかし、今日は真梨子さんをほぼ横から見るアングルである。そして、これが真梨子さんの歌い方なのだなと体感できることがたくさんあった。
それは、中央の座席ではなかなか体感しづらいことである。
(c)THE MUSIX
真梨子さんと握手する機会に随分と恵まれている。
自分の人生を変えた方が1メートル以内に立ってくれているというのも、とても素敵なことだ。
当然初めて握手した日のことは今でも覚えている。それ以上に、小脳が感覚として記憶している。
真梨子さんの手は、華奢な感じではなく、体に比べて大きめでしっかりとしている。
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♫
たしか大人になる頃 細くて美しい 指だったはず
掴もうとしても 指のすき間 スルリとこぼれて消え行く日
♫
闇から生まれた真心 教えてもらったもの瞳のベールを
新たに受け止めたい
アメージングな生き方へと やさしい指で
さあ 名もなき道を行こう
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そう、ガイドラインや、メロディラインなしで歌う真梨子さんは、その長くて細い綺麗な指先で、絵を描くように曲を描いて歌っているのである。
前後に体も自然に揺れている。ほぼ横から見える真梨子さんの動き。それが、背中が歌っているということなのだと体感した。
歌が好きだ。歌を歌いたい。
そんな素朴な真梨子さんの思いも、いつしか、ひとを癒す宿命があることを強く意識せざるを得なくなった。
コンサートシンガーとしてのそんな真心を、あの細くて綺麗な「やさしい指」が、奏でている。
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そして、「for you...」の歌唱方法。
指は動かない。
感情を極力込めない真梨子さんが、昨年の愛知芸術劇場以降、かなり感情を込めて歌っている。
細かい表現のディテールの工夫ではない。
もともとバラードは囁かずに、はっきりと歌うのだという真梨子さんである。
「思いだせば」 「きっと」 の部分のディテールではない。
曲全体が、力強く、魂が叫んでいる。
やさしい指で奏でて表現したバラードとは異なり、
ずっと歌い続けたいという素朴な思いをぶつけてきている。
「赤い愛のfor you...」ではなく、あの東京音楽祭の「パワフルで、なにかをぶつけるような歌唱」でもなく、まさに魂の叫び「命のfor you...」のように聞こえてきた。
これは、真梨子さんが意識してそうしているのだと思う。
それは、暖かい余韻のあるフレンズとの対比である。
素晴らしい構成である。
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今日は、随分と目線が合ったし、幕が閉まる寸前、左を向いてさりげなく手を振ってくれている。
これは、独りよがりであろう。
しかし今後も「命のfor you...」を聞けると思う。
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まり子さん、
しっかりと休養をとり食事をとってください。
少しでいいので、ふっくらしてくださいね。
(2016/10/03)