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あなたの空を翔びたい
2016.11.20東京国際フォーラム
それは偶然が作った映像である。
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東京国際フォーラムの2階席も中央くらいになると、真梨子さんまで50メートルの距離を見下ろすことになる。サイドのモニター画面も手元のタブレットを見るくらいの大きさで、会場の空気感は別物である。
7月のフォーラムでは、カバー曲のできの良さに比べて、オリジナルの低音部が響いていない、ピッチがあっていないなど自分としても書きたくないことをレポートしている。
その後訪れたコンサートでは、丁寧な仕上げと意識した低音部の響きで、ご本人も納得の歌唱であったと思う。
本日の表現も、カバーの声量と表現は素晴らしく、オリジナルの丁寧さと響き方のバランスもよかった。
ただ、距離が遠すぎるから客観的に鑑賞してしまうのは仕方がない。
「編曲の素晴らしさ」、「シンプルな色使いの照明の色のストーリー」、そして「シルエットの存在感」など、今年のコンサートレポートで述べてきたポイントを、まるでコンサートのプロデューサーのような俯瞰する位置で、ひとつひとつ確認したコンサートであった。
やはり、真梨子さんのコンサートは2500人規模のホールが良い。
何回か、「フレンズ」がセットリストから外された。
それは、NEW YORKモードのセットリストの変更からくるものかと判断していたが、恐らくそれは間違いだった。
一時的な封印だったのだと思う。
真梨子さんは、過去の名曲であっても封印する。
古くからのファンの女性に人気のある「女友達」が、そのツアーではセットリストに入っていたのに、その歌詞にリハーサルで泣けてきてしまい、セットリストから外したと述懐されていた。感情をこめず心象風景を描く客観的な歌い方なのに、どうしても泣けてきたとのことだ。
とにかく、今年のコンサートでは、感謝の言葉とファンの笑顔に触れて嬉しいとお話になる。あの、日本武道館で赤いジャケットで歌われた「フレンズ」を、赤いドレスで歌う真梨子さん。あえて、「赤く赤くフレンズ」の時と同じような暖かい間奏にしたのも意味があったのであろう。恐らく感情が入り込み過ぎて、感情を込めて歌うと決めた「for you...」とのバランスが崩れたのだと思う。
ここが、真梨子さんのこだわりなのだろうと。
まり子さんが描く「高橋真梨子」はこれからどこに行くのだろうか。
今年は、とにかく宮原慶太さんのピアノとの呼応の間が素晴らしい。実は、ヴォーカル高橋真梨子、コーラス高橋真梨子として各所に音源が使われている。しかし、「OLD TIME JAZZ」は、アレンジの妙が生きるライブである。毎回万照さんの間奏はアレンジされ艶を出している。そして、宮原さんのピアノの前で歌うようにした「君と生きたい」は、ライブハウスの感覚であり二人の息遣いの呼応を体感できるシーンなのだ。
もとに戻せば、「MY HEART NEW YORK CITY」の曲のコンセプトには実は、ニューヨークへの思いだけではなく「愛が恋しい」「人が恋しい」という思いも含まれている。そして、すさんだ気持ちやブルースという言葉にも、見え隠れする真梨子さんの孤独さも滲んでいる。
幸せの基準は果たしてわからない。ごく普通に食べて飲んで生きていけることに幸せを見つけた「Not so bad」という歌もある。(実はグランパのかわりに使える曲にしたいというヘンリーさんの考えもあったほどだが。) ただ決して恵まれていたわけではないまり子さんが、人一倍人恋しい存在であったのに、誰よりも人を癒す存在になっていくseenを、私はステージでたくさん見てきたのも事実である。
それは偶然が作った映像であろう。
ニューヨークの映像で、Carnegieで歌う真梨子さんの口元が「あなたの空を翔びたい」と囁いている。
永く付き合う友達のように、そして恋人のように、ひとりひとりのファンの心の中で愛を描いていく。
いつまでも「あなたの空を翔びたい」
これが、廣瀬まり子さんが描き続けていく「高橋真梨子」のイメージの一つであろう。
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今年は、「もうちょっと見つめて」から始まり、リクエストした多くの曲を取り入れてくれた。まるで、ファンのプロデューサーのように、私も真梨子さんの素晴らしさを描き続けていく。