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そして...魂が休まる瞬間(とき)

2017.10.20相模大野グリーンホール

時おり、座席の女神様は、おしゃれなプレゼントをくれる。

それは、真梨子さんとの魂のつながりを形に変えて見せてくれているのかもしれない...............

偶然にも入手できた座席は、センターブロックの3列目であった。この会場はステージから最前列までが1.5メートルほどしかない。東京国際フォーラムなら最前列と言って良い。さらに前列の席と席の間に、次の列の席が並ぶことと緩やかなスロープになっていることで、真梨子さんとの7メートルとの距離に遮るものが何もない席である。しかも、その角度は10度。どちらかといえば歌唱時もMC時も、右に開いて動く真梨子さんだから、実質真梨子さんの正面で向き合っている位置である。宮原さんの指の動きも見える。

​斜め下に目線を向ける真梨子さんとアイコンタクトもできる。

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1986年のFORESTツアー以来、31年ぶりに「黄昏人」がSET LISTに加わった。奇しくも、同じ4曲目に歌われている。

37歳の真梨子さんのあのぶつけるような歌い方の中で、当時のセクシーなセンシティブな内容の歌は、より客観的に歌うことで、ひとつの物語として昇華された。

その時の歌唱は、いわゆる物語のト書きの部分は、やや低音で抑え気味に、そして感情の部分では、高音を張り上げる方法であった。

そして30年後。

その歌い方は、「for you...」の歌い方であった。

つまり同じ音でも、倍音の特性を生かしている。発声されるひとつの音の中に、高めの音と低めの音が同時に出でくるのが真梨子さんだ。その「黄昏人」のト書きの部分は、同じ音でも、やや高音エリアで響かせ、感情の部分は同じ音でも、低音エリアで太く響かせて高いKEYを発声する。

その後の歌唱のほとんどがその逆で、高音は高い透き通った発声であることとの対比がされている。

その変化を感じ取れるのがまさにLIVEである。

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正直、前半は調子が良くなかったと思う。何度も、ヘンリーさんの前iにあるマイクで音響調整担当と連絡している。声もつまり気味なところもあった。

しかし、高音部を張り上げなくても良いメゾソプラノの中音で響く「君の海に」から、歌唱が安定してきた。

そして、ジョニイとマリーは、何百回も聴いてきたのに、圧巻の安定感のある歌唱であった。

そう、2011年の東京国際フォーラムのラストのコンサートでの体感に似ているものがあった。あの極度の体調不良の中で乗り切ったあの年のツアーのラストで、"もとの踊り子にまた戻れる"  という歌詞を聞いたとき、一筋の涙が出てきたのを思い出した。

人は、この世に生まれて何かの役割をもって生きていく。いろいろなシーンで、人は演じ続けている。これは、サラリーマンの企業社会だけでなく、家庭の中でも、夫として、妻として、父として母として、役割を演じて生きている。

でも、本当の自分自身が、必ず心の中にいる。

自問自答の回答を与えてくれる、内なる自分の存在。

本当はこうしたいのにという自分である。

そんなひたむきな普通の人に、ジョニイとマリー、「夢の途中」のスローバラードが、魂を休める瞬間(とき)を与えてくれた。

だからこそ、「そばにきて」で伝わって来る切なさがある。

コンサートのメインの「無伴奏」。間奏の暖かい演奏。

そして、「フレンズ」で背景スクリーンに星屑が煌めいていく。後方の座席では、中央から前に星が湧きててくるように動き、今の歌詞のとおり「煌めいて」いるように見える。

しかし、今日の席は、斜め上から、星屑のシャワーのように降り注いできた。

魂を休めさせてくれる歌唱が、実は真梨子さんのお母様との葛藤から、真梨子さん自身の魂を解放しているのだと強く体感した星屑であった。

そして、「ランナー」。

この曲は、ラブソングでありラブソングではない。

ぜひ、歌詞の中のあなたのそばにいる存在を、自分の内なる存在、そうありたい心の声を発する自分自身に置き換えて聴いて欲しい。少なくとも、私はそう聴いていきたい。

いろいろと辛くて酒に溺れる自分。恨みつらみを言う自分。そんな自分を思い返して、本当の自分がいつもそばで励ましてくれる。

​あなたのそばで生きているのは、内なる本当の存在。

だから、魂が休まっていくのだ。

そんな貴重な体験をさせてくれたコンサートであった。

(2017/10/21記)

リリースされた、コンサートアルバムのCD。

ジャケットの裏面写真は、S字のモチーフである。

​真梨子さんが、やや右に開いて歌う、その曲線がまさにS字である。中に入っている歌詞のリーフにも、真梨子さんの背中の曲線美で魅了される写真が載せられている。

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