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Guitar 心が泣いている... 

2018/07/29東京国際フォーラム

真梨子さんのコンサート、そして楽曲で外せない楽器はなんなのだろうか?

かつてとある番組での質問で、パーカッションなどのリズム楽器は大切とご本人も話されている。

そしていつも述べているようにヴァイオリン。そのストリングスの編成は、「for you...」でとても大切な間奏とラストを仕上げる役目がある。

まず、パーカッションとドラムスが演奏しない楽曲。

かつてのコンサートでは、86年のアルバム「FOREST」の中の名曲「レイトリー」である。

朝もや紫色の中の心象風景のシーンが浮かんでくる。

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さて、今年はメンバー全員で行う「ヘンリーバンドプレイ」がない。かつてのプレイの映像を編集した動画がスクリーン一杯に映される。でも、そもそも全員で行うヘンリーバントプレイが本格的に始まったのは、97年香港公演のマーチングからである。

それまでは、バンドメンバー紹介を兼ねて各パートの1-2フレーズを演奏するというのがヘンリーバントプレイであった。

ひとりひとり、プロのミュージシャンのその個性がしっかりとあるのに、バンドとしてまとまった没個性として真梨子さんを支えていく。その中で個々に​演奏の味わいを出すというのがヘンリーバンドの本来の魅力なのである。

こんなコメントと評価を目にしたし、香港公演でのランチパーティでの真梨子さんのバンドのメンバーを思う素敵なエピソードとともに、写真撮影のお礼のメールを宮原さんに送信した時も、同じことを書いたのを覚えている。

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今年のヘンリーバントプレイは、まさにその原点に帰った、真梨子さんのために没個性であろうとしている。

そして、そのメンバーの演奏にひとつひとつ丁寧にスポットライトをあてていることに気づいているであろうか?

特に、東京国際フォーラムの2階席、真梨子さんまで見下ろす距離が50メートル。まるでモニターチェックをしているような席であれば、そのメンバーを照らすスポットライトがよくわかる。

そしてまた実は音響的に優れている2階席である。

「ごめんね」の時、真梨子さんを上から照らすライトが、不規則な円を描いて回転する。その光がステージ上で、そう「ごめんね」が収録されているアルバム「RIPPLE」のタイトル通り、水の波紋のような広がりを見せてくれる。

そんな、相変わらず素晴らしいライティングにのみ込まれながら、「酒と泪と男と女」をじっくりと聴いた。

今までのコンサートレポートで述べて来ているように、今年のメインの曲の1曲が「酒と泪と男と女」である。

そして、「雲母の波」と合わせて、この2曲の伏線があって、もうひとつのメイン曲「for you...」につながっていく構成である。その間で、ゆとりのある「追憶」が、2部のオープニングて穏やかに波調を整えてくれる。

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そうつまり、「雲母の波」も「酒と泪と男と女」も、ドラムスもパーカッションの伴奏がない。

そして、メンバーひとりひとりを、きちんとスポットで照らしているのである。

今回「桃色吐息」「ごめんね」は、真梨子さんのひとつの歴史として、実は客観的にかなりサラッと歌っている。

そして、サラッと歌って原曲を壊さないと言っていたのに、力強く熱唱する「酒と泪と男と女」。

その間奏で、藤井さんのギターが泣いている。

主人公が泣いている。

まさに、そんなことがあった、でもこれからもしっかりと生きていく、そんな思いのやるせないカタルシスな音色である。

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だから、あのコバルトブルーの青とスカーレットの赤で、照らし出される「for you...」の「静止画」の真梨子さんのシルエットが生きてくるのだろう。

本来ならば、ストリングスの間奏なのだけれど、バントメンバー全員でこの大切な間奏を奏でている。

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真梨子さんが96年に休養して支えたのは、ヘンリーさんである。97年の香港公演は、復活の公演。

そんな、苦しい時期の自分を「アイツ」と言ってしまう真梨子さんの心の変化をしっかりと感じ取りたい。

まさに銀河の間を彷徨っていた魂が戻ってきた。

それは、没個性の個性的な演奏の支えあればこそである。

そんなことを感じさせくれた

東京国際フォーラムの2階席であった。

( 2018/07/30 記 )

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