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その一歩は..........

2018/08/18 名古屋国際会議場
センチュリーホール

今回幸運にも代行で訪れた名古屋国際CH。

3000人規模のホールで、前方左右のブロックが、中央に斜めに向いている。

そして、私の座った左ブロック8列目右端からは、通路に1席分出ている。つまり、7列目までの観客が全くいない、真梨子さんまで12メートルの実質、最前列である。

オープニング、会場の雰囲気がぎこちない。ははーんと思ったら、やはりへンリーバンドプレイも席を立たず一生懸命見ている。

このコンサートを初めて見る方が多いのだ。

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仙台公演から、3週間ぶりのコンサートである。

休み明けはある意味心配だ。頻繁に、ヘンリーさんの前のテーブルに足を運ぶ。

このシーンは、ここ数回のコンサートでよく見る。

流石に、「for you...」は曲終わりの余韻が大切とうるさくリクエストしているので、シルエットのまま動かないけれど、ほかの曲はよくテーブルの処に行く。

こんなシーンを見ると、引退公演などなくあっさりとステージを降りてしまうのではないかとすら思ってしまう。

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80年代の真梨子さんの声質は、少しいたずらな男の子のハスキーな声であった。

今日もオープニングから、それを感じさせるいい感触があったのだ。

「五番街のマリーへ」は、あえて宮原さんがひと呼吸遅く伴奏している呼応であった。その1秒にも満たない音のゆとりが、曲全体のディテールを決める。おそらく、曲全体では3秒くらい長い感じになるのだろうが、声の伸びの良い時に聴ける呼応である。

そして、東京国際フォーラムでは、なぜか大人しかった真梨子さん、今日の「逢いにゆくよ」の声が弾んでいる。

「コバルトの海」のサビも、低音を持ち上げている。

「雲母の波」の頭の波音も大きな音量になり、さらっとした熱唱を誘い、波音とともに幕に消えていく。

でもこれは.....

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席を立たず、一生懸命ヘンリーパンドプレイを見て感心している周りの人たちのところで、しかも前を遮るもののないストレートな位置で、彼らの邪魔をするような感じで立たなくても良いだろうと判断して、「追憶」後のアップテンポ2曲を、あえてじっくりと聞いてみた。

確かに今日は声は出ている。

しかし「桃色吐息」「ごめんね」など歌い続けてきた曲は、あっさりと普通に歌っているからであると思う。

曲の中のシーンを客観的に歌っているというよりも、コンサート全体の中での力の入れどころの曲を明確にしている と言って良いのだと思う。

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(c) THE MUSIX

つまり、ヘンリーバンドプレイが、ことさらに打楽器を強調している映像なので、打楽器の伴奏のない「酒と泪と男と女」は、力一杯に熱唱してコンサート全体の抑揚をつけているのである。

​このコンサートの構成の抑揚に気づいている方は、さらに深く味わうことが出来るはずだ。

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「罪と罰を抱えて」とか、「孤独だった」と歌詞の中に散りばめても、しかしさらっと歌うことのできるsingerが真梨子さんである。

だから、ステージに立つ存在としてのアーティスト高橋真梨子 に対しても「アイツ」と表現してしまう。

ラストの挨拶も、どこまで続けられるかわからないけれど、自分が一歩を踏み出すだけと言う。

孤独で踏み出せなかった暗い時間の日々

まさに魂が揺らぐ時間だった、その体験から出てくる言葉が、その一歩なのだ。

『 孤独は常に 自分の中で
  感じることで 誰も解からない
  いつしか恋も 洒落た涙も
  思い出せない 置き去りにした
 』

不倫のシーンを感じさせる2011年発表の「Hold me rain...雨に抱かれて」では既に、ステージ上のアーティストの孤独が、こんなにも直接的に織り込まれ書き込まれている。

こんなことも、合わせて体感できる一言であった。

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かなり喉に来ているのか。

熱唱でなければ、高橋真梨子ではない.......。​

それを知っているのは、真梨子さん自身である。

あと一歩。その一歩。

それを踏み出す真梨子さんの12センチのヒールは、

意外にも、あっさりと脆く危ういものかもしれない。

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でも、今日のあの少しいたずらな感じの男の子の声。

「マリー」のゆとり。​

波打ち際に、爽やかな風が吹いている。

まり子さんにメッセージを伝えて欲しい。

「高橋真梨子は、まだまだ行ける」と。

(  2018/08/19 記 )

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