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Gift
ひとつの完成形
2018.11.25東京国際フォーラム
1F 2列 37番 The Super Premium Seat
1ケ月前、その座席番号を見たとき、あることが脳裏に浮かんできた。
それは、「その瞬間」での真梨子さんとのアイコンタクトの瞬間である。
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今回の座席の女神さまからのブレゼントだけでなく、今日まで真梨子さんとの「1メートル以内の接近遭遇」はかなりの回数になる。そのひとつは2015年のコンサートレポートでも記しているように、相模大野グリーンホールでの終演後のバックステージ訪問であった。香港公演のランチパーテイでも、真梨子さんヘンリーさんヘンリーバンドの円卓は3メートルとなりであった。大変ありがたいことである。
こういう幸運に何度も恵まれているからこそ、私は20年間真梨子さんの素晴らしい音楽活動を書き続け発表してきた。
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2006年から2008年。
真梨子さんは、今の歌い方の良さを聞いて欲しいとずっと語っていた。実際、声が出ていない、歌詞を置きにいっている、細かいディテールが乱れている、など人一倍うるさい私は、はっきりと書きつつとても心配していた。もちろん、そんな私の心配を見事に跳ね返して素晴らしいコンサートに仕上げてきたのが、「高橋真梨子」というシンガーである。
読み返して頂ければわかると思うが、苦しそうな歌い方の「for you...」が安定して来たのは、3年ほど前ではなかったかと思う。
それは、八分の力で歌うことと、そして、持ち前の倍音の声質を活かして高音部のメロディを低音の発声で持ち上げるような歌い方に進化させてきたからだと感じられる。そして同時に、男性曲のカバーアルバムでメゾソプラノの真梨子さんのzoneを安定させてきたことも、良い結果につながったのだと思う。
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1F 2列 37番 「The Super Premium Seat」。
真梨子さんを正面に20度の角度、8メートルの距離。周りの観客の方もとてもマナーが良く、右は通路である。スクリーンなど全く見えない。見上げれば、その角度に小型のスピーカーが位置している。
そしてその音像は、大きな音の半円球のドームに包まれているような、まるで天上界からの音に包まれる感覚である。
(c)WOWOW 2019.01.01 information
(c)Victor Entertainment
本日のコンサートはこの10年で最も素晴らしい完成度の高いコンサートであった。
少しふっくらとした感じの真梨子さん。30年以上も前に初めて握手した時のあの頬の膨らみを感じさせる。
もちろん、まだまだ華奢だ。
でも、その体調の少しの好転が、発声のゆとりを生み音の貯めを作っている。全ての曲のディテールに艶がある。あれぇ? 声が出ていないかなという細部が、実は枯れた色気で表現されている。
声の伸びが良い。ブレスも乱れない。なによりも、ヘンリーさんの前のテーブルに行って、喉をケアする回数が減っている。そして、高音部をメゾソプラノの中低音で持ち上げて表現する厚みと響きと奥行がある。だから、曲終わりの余韻がさらに保たれる。
面白いのは、「桃色吐息」「はがゆい唇」が、高音が透き通りキラキラした可愛い歌唱になっていること。歌いなれて、セットリストに入れなくても良いと私は思っているこれらの曲までも進化している。
そのような変化があるから、「酒と泪と男と女」は、「さらっと歌う、河島英五さんの世界を崩さない」と言っていた真梨子さんは、スタンダードな曲として、感情を込めて自分のオリジナルのように歌い上げていく。
そして、「for you...」は、真梨子さんの感情の波動が、スピーカーからではなく、目の前から直接伝わってくるような熱唱。感動の涙を超えて、その真梨子さんの愛に包まれる感覚である。エンディングの「約束」では、「まり子さん」が真梨子さん自身の今までを歌い上げ、今年のキーワード「生命のstar」が、再び輝き始めた。
Gift それは、天賦の才能。
その才能を与えられたsingerが、さらに努力して苦しんで生みだしてきた、アートとしての歌唱がそこにあった。
ラストの Standing Ovation の大団円。
「海色の風」の曲終わりに場内が暗転している間に、およらく誰よりも早く立ち上がって拍手している私に、その瞬間は訪れた。
ヘンリーさんとともに前に進んでくる真梨子さんから、アイコンタクトの 贈り物 をいただいた。
それは、1ケ月前、座席番号を見た時脳裏に浮かんだあのシーンであった。
なぜなら、真梨子さんから見て左側、客席前方右エリアに必ず最初に目線を向けてくれることを、何度も体感していたからである。しかも本日は2列目である。
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その「どうでしたか」の目線に、私は拍手しながら軽く会釈し微笑んで頷いた。そしてちょっとだけ言葉が浮かんできた。年下なのに、そしてみんなの真梨子さんという大スターに対してはとても申し訳ないが..........
まり子さん、
いままで つらかったね、そして少し重たかったね。
でもよく頑張りました (素晴らしい表現でしたよ) 。
ありがとうございます。
そしてこれからも、まり子さんとともに、
「高橋真梨子」さんを愛していきます。
(2018.11.26記)