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ガラスの向日葵
2019/07/20 よこすか芸術劇場
(C)津南町観光局
特別に何かのメッセージがあるわけではない。
ただ、コンサートを鑑賞して私は自然に言葉が浮かんでくる。
そう、アンコールのお話まで行かなくても、実はオープニングから向日葵の背景であったのだ。
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それなりに重い詩の内容なのに、mellowなメロディに乗せて歌う「逢いにゆくよ」で、作詞家として真梨子さん自身が、「使命」という言葉を書いている。
背景中央の、クリスタルグラスのカットのような三角形がたくさんあるデザインの円。
真梨子さんが描く情景により、エメラルド色になったり
ローズになったり、右上画像の「BAD BOY」の紫色に包まれた、あのカッコイイ白黒のモノトーンの背景になったりと変化する。
まるで、周囲との協調の中での自分の場所・自分の使命というものを輝かせるような、その時の、その心象風景の色を表象していくような感じだ。
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とにかく、今年の真梨子さんの安定感は抜群である。やせ細った真梨子さんにとって、1-2キロの増量でここまで安定するかという安定感である。
なにより中低音の響きが良い。
高音も細くならずに透き通っている。
ピッチがいい。
真梨子さんが難しいという歌いだしもほとんど乱れがない。そして何より、リズムのグルーヴがよい。
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全てオリジナルのSet List。
あれだけこだわっていた原曲KEYを下げてでも、長くステージで歌いたいという思い。
そんな新たな覚悟が、安心感を生んでいるのである。
ボヘミアクリスタルガラス/ (C) 2016 吉谷硝子 株式会社
(C)Victoe Entertaiment 撮影/田中聖太郎氏
「訪れ」の完成度が高い。
原曲もいいが、CD収録分よりもオレンジのライトで照らされるステージの真梨子さんが映えて、フィレンツェやとてもお洒落な南フランス風のイメージを出している。
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あえてリクエストすれば、曲終わりは袖に消えるのではなく、そのまま立っていて欲しいなぁと思う、「君と生きたい」。
横須賀・横浜の港町のセンスのある土地柄か、ノリの良い会場の雰囲気に真梨子さんも乗ってきた。
そして「Heart Breaker」。
切り替わる左右からのスポットライト、まるでハーバーライトの中で、コマ送りに照らし出される真梨子さんの姿。
80年代の「stop my love...」そのものである。
それを感じさせた上での「for you...」。
でも、それまでに少し声を出しすぎて、
「for you...」が枯れた感じのヴォーカルになった。
これは意図してできるものではない。
自分の感情を押し付けない真梨子さんが、感情を込めて歌っているかのような声の感じなのである。
年齢とともにというより、
Set List のこの位置に「for you...」を持ってきてくれたことで体感できる素晴らしい瞬間であった。
枯れている。
素敵に、艶やかに枯れている。
それは、その時々のステージによって光の部分と影の部分があることをちゃんと知っている、「大人の輝き」のような至極のヴォーカルであった
そして間奏のシンセサイザーの音色との相性がとても良い。本来はヴァイオリンなのだが、音が幾重に重なって来るシンセサイザーがとても良く、枯れた声に合う。
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「far away」のマロさんのパーカッション。
奥の深い響きを演出して、幻想的な世界へ誘ってくれる。そんな響きである。
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ふと思った。
節制している真梨子さんだけれど、
今飲むとしたらグラスに何を入れるのだろう。
昔の「Mary's Song」は、バーボンかな。
それともお得意のニッカウイスキーかな?
でも、今日の「Mary's Song」は、YOKOSUKAらしく、少し大人に I.W.ハーパーだろう。
そんな、まさに「昔を語り今を歌う」真梨子さんであった。
(2019/07/22記載)