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Reality

2019.11.24東京国際フォーラム

絵空事の詞の世界。

でも真梨子さんのヴォーカルは、表現を超えて、時空を超えてRealな世界を描き続ける。

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それは、一粒の涙である。

そして、40年分の涙であった。

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11/09の高崎芸術劇場。

おそらく10年後も伝説のコンサートとして語り続けると書いた。しかし、今日の真梨子さんは、2015年10月の愛知芸術劇場もこの高崎芸術劇場も超えた歌唱である。一流ミュージシャンとしての個性あるヘンリーバンドの演奏もベストなパフォーマンスであった。

前日のいつも不慣れな映像撮影のコンサートから開放されたということなのか、とにかく前半はおとなしめにというのに、その抑揚と声の伸び、張り上げは全開である。

まず「逢いにゆくよ」が弾んでいる。

「crazy for you-愛しすぎて-」の低音のフレーズの始まりから、高音のサビまで弦楽器の響きを奏でて伸びていく。

宮原さんも体感しているから、「訪れ」の間奏部分のパートがとにかくお洒落に欧州風のメロディを乗せていく。

「EVERYTIME I FEEL YOUR HEART-君と生きたい-」

2000年のコンサートでアカペラのリクエストが実現してから、英語詞のバートが衰えることなく奥の深い、ホールの残響音が相まった音像の球体で包んでくれる。

それにしても、今年のメインの曲は

「Heart Breaker -波紋の渦-」であったのだと体感してしまう。つまり、80年代の90年代のHardな少しきつい顔をして歌う高橋真梨子の世界である。

1996(C)THE MUSIX

そして「for you...」。前曲と間が、いつもより心待ち長い感覚である。そして宮原さんのイントロ。真梨子さんのと呼応が緩やかに物語を語り始める。ヘンリーバントの演奏のかぶせ方もスマート。間奏がバイオリン協奏曲を聴いているかのような温かさ。激しく熱い声の張り上げ。

今の真梨子さんの心境からすれば、ずっと温かく見守ってきたのはファンである。

そのファンへの「for you...」である。

ファン歴46年 コンサート歴40年。

私と真梨子さんの出逢いと距離感は今までいろいろと書いてきた。2015年の魂の邂逅もあった。

でも、当時は真梨子さんの体調不良で命を削る歌唱であった。もちろん今でもそうだ。

 

でも今年は違う。

彷徨い続けた真梨子さんの魂も「生命のstar」として、確かに戻っている。そして、体力の回復が落ち着きと少しだけ緩めた弦楽器の響き、そしてほんのすこしのゆとりを醸し出していく。

そう、今日の「BAD BOY」は今の「高橋真梨子」でなければ表現できない。

「日本語の歌詞を大切にしたい。絵空事の歌の詞の世界をどこまで表現できるか。」とライナーノーツに書かれたアルバム「ひとりあるき」。

アーティストとして納得のいくアルバムに仕上げた「Dear」。赤く激しく何かをぶつけてくるような高橋真梨子の世界。アーティストの成長とステージの孤独。

お母様との葛藤。そして野辺送りとの対峙。

突然の体調不良と彷徨う魂。

日常のありふれた中で、そばに人がいる「倖せ」への気付き。

これらは、何億光年という宇宙の果てしない時間の中で見れば、長い46年でも一瞬の出来事である。

でも、多くのファンに愛され続けた46年である。

その刹那なのかもしれない「真梨子さんとの出逢い」に思いをはせると、一粒の涙を生み目を潤した。

そういう「BAD BOY​」であった。

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(c)THE MUSIX 撮影田中聖太郎氏

「桃色吐息」でメジャーになったというエピソードを想起させるコンサートツアーTriadのオープニング、サンフランシスのケーブルカー。

とても自然に旋律が流れていく。

「もとの踊り子でまた稼げるわ」のフレーズ。

2011年極度の体調不良の中で乗り切ったツアー、千秋楽のアンコールも、無事戻ってこれたとの思いがこの曲のこのフレーズに込められて心にしみた。

でも、今日はとても元気な真梨子さんの歌声である。

そして、その元気な真梨子さんが、ラストに「生への畏敬」で聴く者の魂を鎮めていく。

40年間のコンサート歴で最高のコンサート。

おそらく高橋真梨子さんのステージとしても最高のコンサートであったと思う。

時間と空間を共有できた瞬間、

真梨子さんがそばにいてくれる「倖せ」に感動し、感謝し続けたい。

(2019/11/25 MDF記載)

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