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二人称の倖せ

2022.02.06 東京国際フォーラム
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(c)日刊ポーツ電子版 20220128

真梨子さんの曲の中でも、「無伴奏」は好きな曲である。香港公演で聞いたということもある。

11月の夕闇というロケーション、雨も真梨子さんの詩の世界にあう。

しかし、今年の心の中に見えてきたシーンは「二人称」の距離である。その相手の存在感である。

そこに倖せを感じられるかどうかが、このLast ツアーの鑑賞ポイントなのだと思う。そしてどの曲でも、自分を投影させることで、真梨子さんと自分との関係が浮かんでくる。

かつてこんな事を書いた。

「高橋真梨子というアーティストは、簡単には成就できない恋愛を、歌の世界の中の心象風景で、その恋を叶えてくれるかのように表現する。そして、たとえ主人公が失恋したとしても、その歌唱が救ってくれるし、いつかは立ち上がっていく世界観を​描いてきた。」と。

​すでに、立川の帰り道、次のフォーラムは真梨子さんまで40メートルはあるので、舞台全体のライティングの演出を観ながら、聴きこんでみようと思っていた。その、「二人称の距離」を真梨子さんはどんな声のtoneで表現していくのだろうかと。

許してほしいという気軽にごめんねと言える相手、そして10年後も一緒にいたいという相手。

実は、「ジョニィ」も「マリー」も、陽かげりの街に住む「恋人」も、目の前にはいない。

不倫を悔やみ、自分を許せない、離れていく恋人がいる。

そして話を聞いてくれる友人がそばいる。

恋に溺れた夜もある。

でも、セレナーデの流れる月夜に、今はいない恋人のことを思い出す日々。

そして本当は、もう少し君のことを知りたかったのだという心の叫び。

​そう、第一部は、そこに恋人はいないのだ。

ありがとう

遥かな人へ

ジョニィへの伝言

五番街のマリーへ

陽かげりの街

桃色吐息

ごめんね・・・

OLD TIME JAZZ

Unforgettable

EVERYTIME I FEEL YOUR HEART

-君と生きたい-

はがゆい唇

フレンズ 

オレンヂ (SINGLE VERSION)

この気分が好きよ 

愛する人へのメッセージ

アナタの横顔

for you...

海色の風~君住む場所へ~

 

グランパ

The Road

第2部は、セットリストが変更になった。

それにより、実はこの二人称のストーリーがすごくはっきりしてくる。

都会の喧騒の中、激しい恋をした人がいる。

壁にぶち当たって、飲んだくれる友がいる。

そんな気の許せる仲間もいる。

ふとそんな若き日のことを思い出すと、出会わなかったら生きてこれなかったであろう人がいる。ずっとそばにいてほしい。

生きるのが苦しくて、どうしてよいかわからなかったとき、そっとそばにいてくれるだけでいい。確かに、そばに優しい人がいる。

そして、明日に向かって、ささやかな倖せをともに過ごしていきたい。

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すべてのステージセットがなくなった、

がらんとしたステージで、アーティスト高橋真梨子は、ラストの光の中に吸い込まれていく。

それは、広瀬まり子さんへと戻っていく瞬間だ。それが、真梨子さんにとっての、もう一人の二人称である「あなた」なのである。

広瀬まり子さんは、高橋真梨子を見事に演じてきた。自分でも頑張ってきたと思うと一言ぽつりとつぶやいた。

そんな存在を、アーティストである自分が、素の存在である自分自身を一筋の明かりで輝かせる瞬間なのである。

そこには、ささやかな倖せを見つけていこうとする一人の女性の姿があり、その姿は光の中でセピア色に消えていくのである。

(2022/02/06 02/07改訂)

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(C)THE MUSIX
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