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LIVE FOR YOU

Unforgettable

2022.03.02 府中の森芸術劇場

3月2日。府中の森芸術劇場。

わずか1ヶ月前に立川でコンサートを開幕したばかりなのに、すでに真梨子さんの感覚は元に戻っている。

今年は、僭越ながらずっと述べてきているようにそのヴォーカルの調子はとても安定している。そして会場を追うごとに素晴らしくなっている。

今日のステージは、あの伝説のコンサートと私が思っている2015年の愛知芸術劇場・神奈川県民ホール。そして2019年の高崎芸術劇場と今年のよこすか芸術劇場。これらの素晴らしいコンサートをまた超えて、この10年の中では傑出した出来のコンサートであったと体感している。

やはり、体重のリカバーが大きいのだと思う。現実的に、全国ツアーがラストと強調しているし、来年は50周年とまで言っている。私の感覚では、来年の公演への準備が整い始めているということだと思っている。

真梨子さん50周年。ヘンリーさん80歳。

こんなメモリアルな年が来年であるのだから。

真梨子さんは、原曲に忠実である。

余計なアレンジはしない。

現実的には、宮原慶太さんの編曲が今の高橋真梨子のコンサートのサウンドである。

今日のMCで、「素晴らしいコンサートは何かと言えば、今話しているそのままで唄うこと」とお話しされた。あえて補足すれば、真梨子さん自身は、極端にアレンジしたり、遅れ唄いはせず、余計なものを足しすぎてきらびやかに見せようとすることもなく、歌唱に関しては真正面から外連味なく、媚びずに唄ってきたのである。

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コンサート前の音楽を聴いていて感じないであろうか? あの重厚感ある曲調は、どことなく英国風でありアメリカ東海岸のイメージである。

自然と格調の高さを感じさせてくれる。

♪「ジョニィへの伝言」は、輪郭が明確でありしかも中身がきちんと詰まっているヴォーカルだ。♪「五番街のマリーへ」は、高音部の輝きと、中低音の重厚感がリンクしてくる。リフレイン部分のトーンがいい。とても深い。

​ただこれらは、オリジナルを壊さないようなライブである。

舞台
(c)WIX.com

しかし、ここから本物のライブが始まる。

宮原さんのピアノががらりと空気を変える。いきなり夜の街だ。今年の真梨子さんの歌唱が素晴らしいのは、一言でいえばほんのわずかな「ため」がある

からである。同じ音をストレートに発音するのではなく、0.08秒くらいの時間の余裕を持たせてゆっくりと発声しているのである。

例えば、♪「OLD TIME JAZZ」で言えば、

 ♫淋しいのなら ここに来てもいいわ

のなかで、「の」と「に」のところが少しゆっくり気味に聞こえるくらい倍音の響きを十分に生かして広げてくれているのである。だから、時間の余裕と空間のゆとりを詞の表情に加えてくれている。

今年はこういうところがたくさんある。

そして、楽に発声できている。

だから、演奏者も体感したテンポに合わせてゆとりを持ちやすい。

特に、♪「Unforgettable」は完全ライブのオリジナルである。だから、会場ごとによって、若干のアレンジも入る。特に、前方の座席は、管楽器の生音とスピーカーから流れるほんのわずかな音のずれが感じられて、もう少し人数の多いビックバンド編成の音に聞こえてくるのだ。

こんな風に聴ける日は、♪「君と生きたい」もより素晴らしくなる。

今日の宮原さんのピアノの入りは、緩やかである。

だから、途中のフレーズで真梨子さんのテンポの方が、やや早いところがあったくらいである。

そして、♪「フレンズ」のイントロのピアノもとても綺麗だった。この数フレーズだけでも青春の季節に時間を戻してくれる感じがする。

私はこういう呼応が好きだ。

観客のためのLIVE FOR YOU.....

演奏者とひとつのシーンを描くていく

演奏者へのLIVE FOR YOU......

そして、「表現された高橋真梨子の像」から問いかける、広瀬まり子さん本人への LIVE FOR YOU。

それが、数多くの愛のシーンを表現し、これからも表現していく「高橋真梨子のコンサート」なのであると感じている。

(2022.03.04)

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