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écarlate
2022.10.09 東京国際フォーラム
3ヶ月ぶりの鑑賞である。
座席は、23列目。中央通路から2列目である。
右斜めうしろはPAのエンジニア席だ。
PA席の前は、20席ほどスペースを空けている。
通路を挟んでその前は、カメラが入っている。
真梨子さんまで、30メートル。
いわゆる前の方が盛り上がっているのを少し遠目で見る席。あえて冷静なままを装いたくなる、ライブ感の高揚はあまり感じられない、しかし音像の定位はとても良い席なのだ。
やはりコンサートは2500人規模が良いかな。
開演10分前に、エンジニアが席についた。
舞台監督らしき方もいる。
5分前のアナウンス。
園田正強氏がその隣に着席した。右後ろ数メートル。
ステージの音楽プロデューサーがヘンリーさんなら、舞台の総監督は園田さんである。
真梨子さんとともにステージを作ってきたそのプロデューサーの目線とほぼ同じ位置に、私は座っている。
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夏の京都・大阪のあの連続2列目中央のライブの高揚感が、今年のクライマックスだったのだろうか。
いや、今日の真梨子さん自身が何かを決めて落ち着いている感じがしたからか。
しばらくの間、岩谷さん産業さんへの謝辞や、「コンサートのツアーがラストです。来年どうするの?」のトークが減っていたらしい。
もちろん、11月に4本の追加公演、ディナーショウが8本。そして福岡の振替公演が1月と決まれば、まだまだ途中なのだ。だから、まず今日のコンサートという感覚なのだろう。いつも通りの平常心。
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真梨子さんがよく言われる、唄い出し、フレーズの入り。これが今日もとても丁寧だ。
ブレスの揺れもない。
夏の京都大阪と違っているとすれば、それは手の動きだ。左手の薬指と小指を閉じるようにして、人差し指と中指をやや開いている。同じような右手が、体の中央でやや下に。時には、お祈りするような感じで手を結ぶ。そして音階を奏でる仕草。
それらの動きの確認は、モニター映像を通してのもので、ステージ全体で見える真梨子さんは、正面で直立している。高音部の張り上げも、体をよじらない。
高音部の透明感が、際立っている。
そして、何よりもその響きが可愛い。
ふと、「桃色吐息」でよりメジャーになった84年のコンサート当時の真梨子さんの高音部と比較していた。そう、あの頃は、変声期のいたずらな男の子のような音質を感じさせていた、少しハスキーな感じもあったのだ。
しかし、いつにもまして今日の真梨子さんの高音部は、可愛いヴォーカルだ。
もちろん、言葉は決して置きにいかない。
体調は万全だ。
our Days 2022
(C)まりスタ
「ごめんね」の歌唱時に、吊り下げられたバーがゴールドに輝くとき、ステージ全体はきらめいている。まるで、過去への許しを神からの愛によって許されたかのようだ。
続く、LIVE3曲。宮原さんのピアノのイントロがいつにもまして、強めに弾かれた音色がキラキラと輝いている。そして、その次のフレーズは力を抜いて情感を醸し出す。
おそらく、今シーズン最高の出来の
「OLD TIME JAZZ」。
1コーラス目、歌詞の場面設定の部分の少しぎこちない恥じらいのある心の動き、そして2コーラス目の心が通い合った後の余韻。
それが、艶っぽく表現されていた。
それを受けての「Unforgettable」は、時の流れに身を任せた感じの歌唱に聞こえた。
久しぶりに聴いた「やさしい夢」.......
銀河を彷徨い続けた魂が、すべての重荷をときほぐし、解放して、自分を許していく。
そしてあらたな自分をみつめていく。
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2列目、11列目では体感できない、
「for you...」のライティング。
背景全面がスカーレットで、赤の金ラメの衣装の真梨子さん。
それが10秒以上続くシーン。
思わず、「そう、これが高橋真梨子だ」とつぶやきたくなった。
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「今ここにいること、ステージに立っていることがラッキー。多くの方に支えられて、多くのファンに支えられて今ここにいる。
決して無理などしてこなかった。
とても幸せです。」
真梨子さんの言葉は、プロとして体調不良など関係ない、母と子の葛藤も関係ない、ただ良いステージを、よい歌を届けたい、そんな純粋な思いからの言葉のように聞こえてきた。
エグゼクティブプロデューサーは、そんな真梨子さんの生身の姿を、バックステージでそしてPA席でずっと眺めてきたのだろう。
真梨子さんが、今ここにいるのは、真摯に歌の表現に向き合い、そしてそんな真面目な自分に厳しすぎたプロの自分を、少し許したからだ。
そして、そのことはずっと時をともにしてきたファンならばみんな知っている。
OUR DAYS
これからも、「若き日の夢」をともに見続けたい。そして、来年も、愛のシーンを描いてくれると信じている。
(2022.10.09)