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for you... 究極の自己愛

2022/02/11 よこすか芸術劇場

それは、昭和56年1981年の秋のことである。それまでずっと見てきた東京音楽祭。その第11回にエントリーした楽曲のスタジオ審査の番組であった。その時に、高橋真梨子さんが出てくるとは事前には知らなかったので、初めて「for you...」を聴いたとき、そのパワフルな熱い歌唱に圧倒された。

もちろん、それがテレビバージョンであることはのちにわかるのであるが、その後20年以上の時を経て、幸運にも第11回東京音楽祭世界大会のノーカット版を視聴することができた。そして、その間のいろいろことがあり、結果として「高橋40年」収録のデジタル版に繋がっていったと思っている。

だから、私と真梨子さんを繋ぐ思い出の曲でもある。

今年の真梨子さんの歌唱はすごい。

そして、画像のような魅力的なシーンを映しだしてくれる。

このウェブサイトでは、お気に入りの楽曲紹介のページで、僭越ながら「for you...」を解説している。

もちろんいろいろな解釈があってもよいだろう。

ただ、その詞が真梨子さんのことを書いたのではないにもかかわらず、まるで真梨子さんの生き方を書いているかの錯覚に陥るのは、故大津あきらさんが描きたかった世界が具現化してきたかのようである。

明らかに、

「for you...」は、「longing for you...」 であり、

永遠に求め続ける愛なのだ

そう。誰かに献身的に尽くす愛ではない。

 

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まり子さんは、子どもの時に担任の先生から「おどろくほど暗い性格」と評されたことがある。ラストのMCでも述べているように、よろしくない環境の少女時代であったことは事実だ。

そんな彼女を救ったのは、お父様の奏でるメロディへの懐古であり、そして唄うことで、自分のポンと空いた心の穴を埋めていく強い思いだったのだと思う。

だから、それが、高橋真梨子というアーテイストの原点だし、妥協しない、表現したいものにこだわる真摯さに繋がっていく。

それは、誰にも触れてほしくない彼女の絶対領域なのである。

だから、後年お母さまとの葛藤がフラッシュバックして真梨子さんの心を苦しめた時も、誰かのために唄ってきたというよりは、究極の自己愛として極めて来たのだと思う。

もちろん、自分勝手でも自己中心的な生き方でもない。

まり子さんは、高橋真梨子を創っていく一員として、ヘンリーバンドや舞台スタッフやその他多くのコンサートに関わる人々を大切にしてきたのだ。

そして、いつしか、その究極の自己愛は、多くの人々にとって癒しとして評されるようになる。当然そこにも、抵抗はあったと思う。誰かのために唄うということへの重さである。

しかし、時を経て、2011年に♪「THE ROAD」を詞として発表することで、その苦しみも悲しみも昇華し続けてきた。

まさに、唄うことへの恋愛に落ちた一人の女性が、愛を求め続けて生きてきた姿がそこにある。​

​しかし..............

1.jpg
(c)THE MUSIX 2014 Adultica

2022年の「for you...」は、「赤く燃えた高橋真梨子の for you...」であることは間違いない。

この10年でも、安心して聴くことができる歌唱である。

もちろん、素直に感動すればよい。

ただ、ラストのシーンを見て知っているうえでの

感動は、少し異なっている。

赤い熱い情熱の中に、冷たく埋められていない心の隙間をなぜか感じ取ってしまうのだ。

力強く、素晴らしければ素晴らしいほど、

その闇を昇華してきた真梨子さんの寂しさが顔を出している感じなのだ。

だから、強烈に「あなたが欲しい」と力が入る。

おそらく、来年も、再来年も通常のツアーがあると感じられれば、このような冷めた部分は私の心にも浮かんでこないであろう。

 

寂しかった、だから求めた そして求め続けたい

そのような心の叫びが伝わってくる

「2022年のfor you...」なのである。

でも、真梨子さんは、「  ?  いつも通りよ 」
と言うにちがいない。

もしかしたら、友人であったら「飲もうか?」と話しをそらすのかもしれない。

それが、飾らないアーティスト高橋真梨子の姿であると改めて感じでいる。

​(2022.02.13記載)

for you...
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