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Mild Sunny
20241012 TACHIKAWA STAGE GARDEN
完成度の高い楽曲に、真梨子さんの歌唱。コンサートのコンセプトなど気にしないで、ゆっくりと彼女の歌声に浸ればよいだけだ。
ただ、「髙橋真梨子」であることが人生そのものでもあったのが廣瀬まり子さんである。いろいろと「髙橋真梨子の世界」を書き始め、まり子さん自身の生き方の少しを体感していくうちに、私の鑑賞記録は「演じられた世界」と「演じているまり子」さんという2つのラインで語られるようになってきた。
EPILOGUEツアーのコンセプトは、10/9にSET LISTを見て予想したとおりである。ステージシンガーの孤独、そして彼女を支えてきた「あなた」である。集大成のツアーであればこそ、なおさらだ。
開演5分前から、アナウンスが流れる。
そのあとに流れた楽曲かある。
これについては、別掲のレポートを参照してほしい。
2FL2-7の座席。フラットなライブ会場に対して、両サイドの階段席。真梨子さんまで、直線距離で20メートルの角度40度の位置。しかし、センターの真梨子さんをやや上から拝見するその角度は10度ほどの目線で、前列の観客が全く気にならない。素晴らしい座席であった。
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とてもSimpleなステージセット。
いつかのコンサートで見たことのある既視感。背景のやや楕円のスクリーン。流れる映像もあのシーンだと思い起こさせる。
いつも私が書いている照明、ライティングの色の変化。
曲終わりに、ひとりセンターに立つ真梨子さん。
そして、その真梨子さんのシルエットが、ゴールドに、ストロベリーピンクに、そしてまばゆい白色の輝きに彩られていく。
このコンサートは、ぜひその細部までをも体感してほしい。
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音響も、音がとがらない。
何といっても、真梨子さんが元気だ。
2022年のour Daysツアーを、絶賛した続けた私だが、その時以上のコンディションにある。もちろん、細かいディテールの乱れは年相応にある。
しかし、そのロングトーンや、はずしてはいけないフレーズの声の張り上げは凄いの一言であった。
まり子さんのこの2年間。体調を崩した時もある。一方でまり子さん自身が、もう一度「髙橋真梨子」を俯瞰した時間も取れたのだろう。また、体重も増えた。力が出せる。
情熱の赤の高橋真梨子もあれば、映画のワンシーンを描く高橋真梨子もいる。そもそも、真梨子さんの世界はそういう心象風景を描いてきた。
でも、コンサート全体のトーンは、マイルドで心地よい晴天のエアーなのだ。それは、全ての曲の入りがとても丁寧で、音程の乱れも、ブレスの揺れも強くならず、ほんとに自然に入っていったからである。
また、バラード曲も、次のフレーズが少し早めに発声されることもほとんどない。だから、ヘンリーバンドの演奏に対しても、真梨子さんのヴォーカルが見事にフィットしていく。
そして、この感覚は、1曲目から何となく感じられる。
「あなたの空を翔びたい」が、スローバラードに聞こえてきたのだ。
後半は、調子のよい時の、左手の上下の動きも随所に出た。
コンサートの中の「ライブハウス」の3曲も、その異空間を演出する。
Heart Breaker は、80年代の stop my love...
無伴奏は、HEART である。
まり子さんは、幾度となく「髙橋真梨子」というシンガーを「あなた」という存在として見つめてきた。まり子さんという自分。「髙橋真梨子を演じるステージシンガー」としての存在。
それを支えてきたのは、ヘンリーバンドであり、スタッフであり、ヘンリーさんであり、そしてファンである。
それを「あなた」という言葉で、包み込んでいく。
象徴的な8つの円形装飾。8人のヘンリーバンド。
一人のまり子さんである。
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2015.8.28 相模大野のコンサートの後の、まり子さんとの「魂の邂逅」。あの時の疲れ果てて、一言も語れない、しかし温かいまなざしで対応してくれたまり子さんの姿。
9年たって、今日の「真梨子さん」は、まったくの別人である。
今年81才になるヘンリーさん次第であるが、
まだまだステージに立てる。
EPILOGUE は、今までの高橋真梨子の最終章。
しかし、
それは、「そして未来のプロローグ」であるように思えている。
(2024.10.13記載)