top of page

46年目の伝言

D-MP18OUIAAjIV3.jpg
(C)THE  MUSIX 撮影/田中聖太郎氏

2019.11.09 高崎芸術劇場

このコンサートは、必ず伝説のライブとなる。そして20年後も私は語り続けるであろう。

今シーズンの真梨子さんの極めてレベルの高い安定感あるヴォーカルは、既報の通り9月の相模大野、神戸国際会館、松戸森のホール、そして11月の横浜神奈川県民ホールと、過去最高のコンサートを連続して創出してきた。

そして、今日のコンサートは、真梨子さんのこれからも続くステージへ​、そしてこれからも時を一緒に綴っていく多くのファンに対して、

「高橋真梨子からの伝言」を残してくれた。

******************

杮落しが済んだばかりの高崎芸術劇場。

舞台正面の間口が約57m奥行きが約37mで、左右と後方に同サイズの3面舞台がある。

これは、サイズこそ違えど、馬蹄型のびわ湖ホールと似ている。

オーケストラの生音が響くように、木材集積板仕様の壁面と床は心地よい残響音が残る。

客席は、実質2階席までなだらかなスロープが続きどの席からも舞台が見やすく、列間もゆとりがあり、2000人規模のゆとり空間を作っている。このような特長のあるプロセニアム型のホールで、前方ブロックの座席はセンターを向いて弧を描いている。

************************

開演前に、George  Winston の「Autumn」がいつものように会場の雰囲気を落ち着かせる。そして、これは宮原慶太さんと真梨子さんの呼応の「素敵な演出の伏線」である。

前方ブロックは、d&b audio-technik社製のラウドスピーカーから、まるで天空から音がシャワーのように降り注ぐ設計になっている。

その音質は、華麗なヨーロピアンサウンドのようにやや高音が堅めな印象だがとても繊細である。弦楽器の響きも温かい。

あえて言うと家庭用オーディオならば、B&W、マランツという感じかなと。

フラットな音響空間を作る真梨子さんのコンサートであれば、なおさらその魅力が増す音響設備である。やはり2000人規模のコンサートホールは素晴らしい。

11.jpg
(C)THE  MUSIX 

そのホールでの真梨子さんの歌唱。

全体の力の入れどころの構成を、もちろんきちんと意識している。基本的なトーンは、力八分の声量で、響かせる。声を張り上げない。

高音部分のメロディーラインも、倍音で同時に発せられている高音を、低音の響きを持ち上げて表現する曲と、明らかに高音にシフトして発声する部分を歌詞の内容に合わせてごく自然に変化させていく曲がある。

もちろん、繊細なディテールの表現に乱れがない。

これは、各曲とも歌いだしに力が入り過ぎないようにスーっと入っていくことができているからである。真梨子さんが大切にしているポイントである。

「Mary's Song」が、管楽器の響きがとても豊かで温かく大人のバラードに聞こえてきた。「訪れ」はとてもお洒落で、宮原さんのサウンドがコンテンポラリーな欧州サウンドになる。オレンジの幾重ものライトが素敵だ。

いつも素晴らしい「君と生きたい」。

宮原さんのテンポが少し早く、といっても私の体感で0.3秒くらいなのだが、真梨子さんが追いかけているような感覚が、今まではあった。

しかし、今日は、真梨子さんの声の伸びに宮原さんがメロディを付けていくという感じで期待通りであった。

そして「Heart Breaker」。

横浜では、「for you...」と「BAD BOY」で熱唱するからか、少し抑え気味であり、激しい曲の内容なのに新しいバラードに聞こえていた。しかし、今日の「Heart Breaker」は90年代のまさに赤く燃える「高橋真梨子」そのものであった。

あっさりとさりげなく歌う「はがゆい唇」。

赤い激しい愛の「for you...」と、

声量豊かにとにかく優しくて温かい「BAD BOY」。

この2曲で真梨子さんの描く世界に包まれていく。

真梨子さんの波動に魂が共鳴していく瞬間である。

 

「ジョニイへの伝言」。

イントロのとてもゆとりあるゴージャス感。

サンフランシスコの映像なのに、ウィルシャーやニューヨークの裏街をイメージさせる。

いや、カーネギーホールの楽屋口の感覚なのか。

いつも通り、宮原さんのピアノは軽やかに入っていく。そして、ヘンリーさんのフルートが入るところからが今日は素晴らしい。いつもゆったりと真梨子さんと合わせるように入りながら、徐々に他の楽器が重なっていくにつれてややアップテンポになるところ、今日は、宮原さんのテンポのそのままになだらかに流れていく。少しウェットで艶やかなヴォーカル。

天井の高いホールでの、満天の星空は格別である。

銀河の彼方から、星が輝き煌めいていく。

空間を去来していたこともある真梨子さんの魂が、本当に生命のSTARとなって、確かに今戻ってきている。

真梨子さんはとても元気だ。

赤く熱い1985年の高橋真梨子。

温かく語りかける2019年の高橋真梨子。

このふたりの真梨子さんが8m前にいる。

そして、それは来年のそして近未来のステージをも想像させる。

まさに「46年目の伝言」の感覚なのである。

(2019/11/11記載)

bottom of page