カーネギーホール公演のオファーが届いたころに取り組んでいたのが、まさに名曲のデジタル化である。

まずは定番曲ということである。もちろん、伴奏の音源は原曲。その音源に合わせたという感じは強い。

もちろん、表現は全く異なる。

原曲の「for you...」はのどの開きの関係か、倍音の特性というよりも、若さにまかせてぶつけるハードな歌唱でとても硬い印象である。しかし、このデジタル版は、10年前までコンサートで聴いていた真梨子さんの歌唱である。確かに入りの部分の語りが、少し早く、まるでシャンソン風を思わせる入りであると言えばわかる方も多いだろう。また、ライブでは、既に15曲くらい歌っている真梨子さんの息遣いにピアノが呼応して、その日の入りのテンポが決まる。しかし、録音では真梨子さんが音のテンポに合わせていく。その微妙な違いがある。