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東京国際フォーラム 2014/07/27
恋人たちの時間
当時の恋人たちは、そんな時間も恋愛の一瞬だった。
携帯電話もポケットベルもない。
「じゃあ、7時に山野楽器の前で・・・」
ときには、ハチ公が逃げ出さないように尻尾つかんでます・・・なんて言いながら
その時刻が来るのが怖かったりした。
彼女は本当に来てくれるのだろうか。
渋谷の交差点で信号を待っていたら、待ち合わせ場所に急ぐ女性がいた。
彼女だった・・・
渋谷公会堂の前で待ち合わせていたのだ。
そんな時に真梨子さんの80年代のラブソングが流れていた。
今年のコンサートは、アルバム「Dear」をコンセプトの基調に作られている。
燃える赤い愛だ。
しかし、メインの楽曲「浪漫詩人」「DJがいつもかけるうた」はDearには収録されてはいない。しかし、私はまたひとつ気づいたことがある。「浪漫詩人」のスポットライトである。それは、「Stop my love」のスポットライトであった。
「Stop my love」のスポットは大きく2つのパートがあった。激しく直線的に3方から照らすスポット。そして、客席を照らすムービングライトである。このムービングライトは、ホールによって回転スピードが違ったのだが、東京厚生年金会館のムービングライトは、曲のテンポと同じ回転をしていた。
そう「浪漫詩人」の♪ 二度とあの時の浪漫は歌えない と歌う前のメリハリをつけるリズムの時のスポットは、ヒロインの心情同様に、激しく直線的なライトで表現されているのである。
メインの中にも「Dear」のスポットがあり、ラストの「far away」がムービングライトで客席を照らしていく。この変化が、演出の妙になっていた。
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では、「漂流者へ」のあの螺旋階段はなんなのだろう。
それは、かつてのコンサートCinemaで歌われた「連絡」のあの銀色の波を打つ照明の装飾ではないか。それは、まるで波を打つように背景でうねっていたのを思い出す。
また、fiestaでの「そばにきて」の装飾である。大きさの異なる銀の球が一本のラインに吊るされてそのラインが何本もある。遠目に見ると、まるで自然にひねられたリボンのように真梨子さんを包むようにして輝いていたのを思い出す。
そう、あの らせんかいだん は、待ち合わせの場所に現れなかった恋人からの連絡を、午前4時まで待ち続けるような、切ない瞬間を投影しているのではないか。
午前3時まで、LPレコードを聞いていた甘い恋愛。好きだ嫌いだというような感覚から、少し恋が進めば、相手の性格や生活感をどこまで受け入れて許せるのか、そして相手の家族との関係はうまくいくのだろうかなど、ある意味重い話も出てくるのだろう。そんな恋愛は第2章でもある。
そんな想いに揺れながら、ずっと連絡を待ち続けている。
そして、追いつこうにも、違う方向を向き始めた恋人がそこにいる。
そんな瞬間愛が、携帯電話のない時代の名曲「漂流者へ」の世界でもある。
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ふと、思い出した。
銀座和光の夜景が見えるレストランがあったことを。
そこには、らせん階段があって、素敵な恋を語れる空間が広がっていた。
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幸いにも、交差点で待ち合わせ場所に急ぐ彼女と、29年同じ時を刻むことができた。真梨子さんの赤い愛のseenを、当時聞けたのは素晴らしい思い出でもある。
「恋人たちの時間」
そんな時の流れと距離感の揺れ を、『らせんかいだん』は表現してくれている。
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ヘンリー広瀬さん作曲の名曲も、ぜひ聞いて欲しい。
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