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涙もろいペギ―
今年のコンサートでスクリーンに女性が映し出されてだんだんと口紅がひかれていく演出がある。
「涙もろいペギー」なので、多くの方が感じられているように、歌の中のヒロインに光がさしてくるような演出である。
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あえて言えば、「紅を点す」ということに触れてみる。
今まで、真梨子さんの歌の中で、この言葉のニュアンスが使われたとしたら、( 実は少し違ったシチュエーションになってしまうのであるが ) 「向日葵」 で歌われた「特別な化粧」のシーンであった。もちろんこれは、真梨子さんのお母さまへの最後の化粧であり、もっと生きていてほしかったという思いの化粧であった。
では、今回スクリーンの彼女は誰か。
それは、広瀬まり子さんである。そして「紅をさした」のは、ヘンリー広瀬氏である。
真梨子さんの歌は、どんなに悲しい失恋の歌でも、苦しい身をよじるような歌詞でも、実は最後に、登場するヒロインは救われるのである。どこか、自分を取り戻して明日への期待と新しい生き方へ希望の光が満ちてくる。
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かつて、真梨子さんは「貴方と」という歌の中で、その内容は愛する人にそばにずっといるよという思いで語りかけた。しかし、同時にそれは、高橋真梨子さんという、「人を歌声で癒す存在」 「孤高の存在である」 という宿命的なアーティスト像に対して、自分も努力して近づいていくよという強い気持ちを述べていた。まさに、まり子さん自身の内なる自己への語りかけとも、感じ取れたのである。 それは、ある意味、まり子さんから真梨子さんへのメッセージであった。
そして今、真梨子さんは、元気にステージに立っている。
2011年の苦しい体調不良から戻って、高橋真梨子として素晴らしい元気なステージで魅せてくれている。
それは、アーティストであり続けた頑張りが、そういう弱いところを見せてきた「まり子さん」自身への励ましでもあった。そして何と言っても、アルバム「AFTER HOURS」がリリースされる前後の一人の女性としての「まり子さん」自身の悲しい思いが払拭されていることを表しているようにも思えてくる。
まさに、今回は、「アーティスト高橋真梨子」が「スクリーンに映った昔の広瀬まり子」さんに、まるでペギーの友人であるかのように励まして、そばにいて力になってあげると熱く思いを歌っているように私には聞こえる。
「貴方と」の時とは逆の立場である。
そして、「紅をひいて」元気にしてくれたのは、82年当時は相談相手であったヘンリーさんである。
公私にわたって、真梨子さんを、そしてまり子さんを支えてきたのだから。
だからこそ、今年の「涙もろいペギー」は、原曲に忠実な歌い方であり、ストリングスの間奏も原曲の音源を使用しているのだと思う。オリジナルを大切に歌う。 まさに、原点に回帰している。
それは、今の高橋真梨子を作ってきてくれたのは、ヘンリー広瀬さんであり、氏のプロデュースあればこそだからである。
一人の孤高のアーティストに、紅を点す・・・・
今回の演出は、そんな想いで私は眺めている。
(2015/06/16記載)