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「目を見て語れ恋人たちよ」の裏面ジャケット。ちゃんと命のシルエットが使われている。
July . 26. 2015 東京国際フォーラム
「電話」
東京国際フォーラムの2階最前列。本当に上から見下ろす位置である。立ち上がれば、下に引き込まれそうになる。
そういう座席は、コンサートに来ているというより、「観ている」 という表現になってしまう。
それだけに、真梨子さんを舞台の袖から照らす反対側のライトをあえて映して、真梨子さんの輪郭を映す「命のシルエット」があるだろうと期待した。
しかし、やはり予感は的中した。
今年の「命のシルエット」は、舞台の後ろから照らす「旅の宿」のナチュラルホワイトのライトと「虹の水」のオープニングで輝く、赤い太陽を表すライトであった。
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もう、「3回目」になると、今まで発表してきたことを確認しながら見てしまう。
パールピンクのライトが、「別れた彼氏からプレゼントされたパールピンクのルージュ」 を表して、「Sincerely」と「はがゆい唇」で 表現されている。
赤いライトは、特に熱い情熱の「虹の水」 と 「for you...」 で印象深く使われている。
コンサートのメインの 「目をみて語れ恋人たちよ」 と 「酒と泪と男と女」 は、ブルーのライトのみが1曲を通して使われている。
しかも、今日の「酒と泪と男と女」は、ハンドマイクであった・・・・・・
極めてシンプルで、真梨子さん自身が舞台の全てに拘っていることを感じ取れる演出である。
だから、びわ湖ホールのコンサートの後、「ブルースを聞かせて」で歌っていない、2フレーズ目の歌詞の「あなたがくれたパールビンクのルージュ」ということを取り上げて書き込んだのだ。
しかし、もう一つある。
それは、インターネットやEメールや、もちろん携帯電話もパーソナルコンピューターも普及していない1980年代のことである。
恋人との連絡手段は、電話しかない。
デートの別れ際に、次のデートの待ち合わせの時刻を約束する。
そういう、相手への信頼とある種の不安感を打ち消す恋人たちのルールがあった。
「ブルースを聞かせて」はそういう、恋に迷うヒロインが、25時まで自分からの電話を、彼は待っていてくれるのだろうかという、恋愛の距離感に揺れる歌である。
今回のコンサートでは、この部分も歌っていない。
ある意味、昭和の恋人たちなら、誰でも体感してきた時間と空間である。
「電話」
だから、「目をみて語れ恋人たちよ」で、携帯電話であんなに話せるのに、「なんで、素の人間の魂で語れないのか」 というメーセージに繋がっていく。
「生身の重くなるような経験」をしてるからこそ、当時の電話で待っているシーンは、恋人たちの時間の大切な瞬間なのだ。
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そして、2時間以上のコンサートで、わすかなこのパートを省略しても、時間と曲の進行を円滑にする必要があるとは思えない。
私には、意図的にこういう構成にしているとどうしても 「見えて」 きた。
もとより、真梨子さんのコンサートには、こういういろいろと隠れたヒントが多い。
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かつてアルバム「 time of love 」 で真梨子さんは、「電話」という名曲を歌っている。でもこの電話は携帯電話の時代であろう。そして、私は、今は身近にいない恋人へ電話をかけるという意味だけでなく、そういうピュアーな恋愛をしていた頃の自分自身に電話をかけているのではという視点でも鑑賞してみたことがあると記載した。なぜなら、部屋にぽつんと置いてある電話が鳴っているからである。
いずれにしても、恋愛が進めば必ず苦しい瞬間、現実をしっかりと受け止めて許していく、それは相手を許し自分も許す瞬間が来るはずである。
そんな、少し落ち着いた客観的な時間が、あのブルーの単色のライトに込められている。
だからこそ、「for you」...」のスカーレツトの赤い愛が生きている。
今年、真梨子さんが元気なのは、1980年代の良い意味で少し突っ張って自分の思うがままに歌っていく、その気持ちに素直にのって表現しているからであろう。
緑のエバーグリーンのライトに包まれて、曲のラストに深々と (スポンサー企業に) ゆっくり頭を下げる真梨子さんを見て、余計そういうアーティストとしてのプライドも感じとれたのである。
もちろん、そんな私は、心の中で真梨子さんに電話をかけている・・・・・・・・・
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ふと思うと、真梨子さんのブルーの衣装はこの画像を原点にしているのかと思う。