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Carnegie 1993.07.06 

93年の4月ごろ思わぬDMが届いた。まだファンクラブがないから、直接事務所からのものである。

真梨子さんがカーネギーでコンサートを行うというお知らせであった。

ニューヨークかぁ、カーネギーホールかぁ、へぇ1週間休めない....他の歌手も行っているこれがあの海外公演なのかという思いから、旅程表を見ると、フーンという感じであった。それは、アメリカ旅行がメインでラストにニューヨークに乗り込みその夜にコンサート、翌日が船上パーティで帰国というものであった。4年後の香港ツアーのように、真梨子さんのコンサートがメインでという感覚ではない。とても休めない日程でもあり不参加となった。

カーネギー公演の話しは、2月にオファーがあったと園田正強エグゼクティブプロデューサーが話している。それはどこからか?

結論から言うともちろん推定だが、93年からスポンサーになったUNIMATからであろうと想像される。もともと不動産業の会社がその数年前に、業界NO.1シェアのベンディングマシーンの会社を傘下に収めて、オフィス事業、健康・スポーツ事業にも拡大し世界戦略を練り始めたころである。

TVのCMで、5月に入ると初夏の陽気に

「Sincerely」歌声が流れ始める。

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全日空ハローツアーや、フジテレビが後援していることもあり、ずつと同棲していたヘンリーさんとの婚約会見も、各局の芸能レポーターがニューヨークに駆けつけている。

まさに、大きなイベントであった。

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9月に放送された、東京12チャンネル「高橋真梨子カーネギーへの道」はUNIMATの完全提供であった。9月末の放送は、WOWOWが前年の立川市民会館に続いて独占放送。当然ビデオクルーは、パシフィックビデオであった。「Sincerely」の印象も強く、こんな感覚なので、Carnegie93の公演は、「VERSE」ツアーという感じがしてしまう。放送でも、エンディングのロールは、

「My Heart New York City」であった。

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(C)THE MUSIX
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(C)THE MUSIX
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カーネギー公演は、「Lady Coast」ツアーの一夜限りの公演として行われたコンサートである。7/4はアメリカ合衆国の独立記念日だ。

7/6のコンサートの翌日、ランチパーティのための船着場サウスイーストポートから、なんとフジテレビ「ミュージックジャーナル」が衛星中継で、初披露の「Sincerely」の模様と、インタビューを放送した。

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​こんな華やかなプロモーションとは別に、舞台の設営は至難のプロセスであった。1891年創設のホール。確かにビートルズも公演している。しかし、基本的にはクラシックのホール。小さな音でも拾うような当時の設計である。もちろんびわ湖ホールや高崎芸術劇場のように、床や壁が反響板であり吸音機能を持っているホールではない。弦楽器の響くホールである。93年当時は、ホールが設置した小さ目なスピーカーはあった。

よって、音響機器はようやく現地法人の音響スタッフの尽力で左右に2台ずつ。カメラ7台と数多くのムービングライトというのもホール史上初であった。園田氏も大幅にホールに譲歩してもらったと述懐している。しかし、スタッフはユニオンで責任分担が明確で指示通りのことしか仕事をしない。運搬担当は運ぶだけ。現場調整ということは関係ない。こんな状況をクリアしてなんとかこぎつけた舞台設定である。

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公演は大成功であった。数日後公演を報じた、本来辛口で10分も会場にいないといわれるニューヨークタイムズでは、アンコールの写真とともに、ほぼ完璧なアメリカン・アクセントの

「Sentimental Journey」をはじめ、そのヴォーカルは、世界のベストといわれるアーティストの一人であろうと大きく称賛する記事を掲載した。

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「音楽の聖が棲んでいる」と後年回顧している真梨子さん。

カーネギーは、1891年5月5日、指揮者ウォルター・ダムロッシュと作曲家チャイコフスキーが柿落としのコンサートを行ったホールである。そんなホールの歴史への畏敬の念を込めて、真梨子さんのコンサートのオープニングは、チャイコフスキー弦楽セレナーデ第1楽章であった。

ストリングスの編成........ということは、あの曲の演奏は....そんな期待を膨らませるオープニングであった。

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2020年10月

27年前のこの公演を改めて鑑賞する。

そして、それは驚きであった。

何度も見ているはずなのに、新しい発見があった。

それは、真梨子さんのその後のコンサートを意味づけるいろいろな伏線にもなっている。

そして、素晴らしい演出もある。

​(2020/11/03記載)

ON THE STAGE
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