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cinema
(C)VICTOR ENTERTAIMENT THE MUSIX
2004.5.12 VICL-61373
1.心閉ざさないで
2.真っ白いシャツ
~Lonely girl Lonely boy
3.rainy street
4.夢って
5.月のダンス
6.色のたより
7.You turned to wind
8.my life
9.ワンダフルナイトcinema
2004年リリースのこのアルバムから、真梨子さんの音楽活動にある変化が現れてきた。それは、コンセプトアルバムの全国ツアーではなく、コンセプトアルバムとは別のステージの展開である。このcinemaも、cinemaツアーでの曲目セットリストにはポイントの節目のところに楽曲が使われているが、全体の色が出ていたわけではない。まるで映画を見ているようなステージという感覚から逆にCDがリリースされたといったほうがむしろよいのかもしれない。
このアルバムの中では、「心閉ざさないで」がここ数枚のアルバムの基調となっている。特定の誰を励ます訳でなく、実は自分に戻ってくる歌詞が並ぶ。
「rainey street」も「my life」も杜の都をイメージさせる。
音楽の街でもある仙台は、街路樹の歩道沿いのシーンを想起させる。
「夢って」は不思議な曲。真梨子さんが夢になぜか登場する私には、現実なのか夢なのか。このようなホームページを創っていながら、近づいたようでしかし真梨子さんとの距離感を保たねばならないそのもどかしさを感じさせる曲である。
「月のダンス」は仏蘭西映画。
「色のたより」は旅情。
カタカタと映写機が回っている感覚。そういえば、「two for nin」eの曲を聴き終わったときフェイドアウトする感覚があったがとても似ている。
映画好きの真梨子さんらしく、
「ワンダフルナイトcinema」
ヒーローもヒロインもまさに絵空事の世界を生きている。でもその世界に感動するのは、ひたむきさがあるからである。
まるで「高橋真梨子」を演じているまり子さんの息づかいが感じられるようだ。
ラストシーンの鉄則は 生きること
近い未来 また逢える
Good Night
See you in Dream!!
(MDF音楽館2007掲載文)
アルバムの聴き方はファンそれぞれである。だからこそ、2020初夏からの聴きなおしで、かなり大胆に述べてきている。
前作の「time of love」で、真梨子さんが「魂の解放」をしたアルバムであると述べた。このラインはしばらく続く。それは、作詞家「高橋真梨子」の世界だからである。家にこもっていた頃に書き溜めた曲がある。そして、落ち着いて闇の世界から出てきて振り向いた時に、少し冷静に見つめられる自分がそこにいる。
それは、スター高橋真梨子との対峙でもある。作詞家高橋真梨子が描いた世界を、ヴォーカル高橋真梨子が歌う。しかし、そのベースは廣瀬まり子さんである。
左の感想文では、1曲目を基調と書いた。しかし、より大きな年月の流れから俯瞰して視るとこのアルバムは、その対峙する自分(廣瀬まり子)の心境が直に溢れている。それが歌全体にも、ひとつのフレーズにも。こういう表現は、恋愛詩には決して出てこないという歌詞が唐突に出てくる。
cinemaは、真梨子さんが体調を崩していた時に翌ヘンリーさんと映画を見ていたということからきている。その映画を見ている自分は歌わない自分である。高橋真梨子は、まさに自分がスクリーンの中で見ている存在なのではないか。そんな素朴な感謝の想いの言葉が、「高橋真梨子はみんなが作っているもので私はそれを構成する一員に過ぎない」というコメントである。まさにこれを象徴するのが、ブックレットのスター高橋真梨子のポートレイトであり、制作現場の素の廣瀬まり子さんの写真との対比である。
更に、多くの制作スタッフ、ミュージシャンの写真が掲載されていることからも感じ取れることだ。
楽曲全体の中で、たしかに「月のダンス」はマンハッタンの夜景を見ながら屋上でダンスを踊っている主人公の姿が見えてきた。また、他の曲では、電飾にデコレーションされた街路樹の並木や、お洒落なカフェの街並みも見えてくる。
しかし、「時はただ過ぎていく」「凍てついたドラマ」「閉ざされたドアの向こう側」などの言葉は、現実に戻って来た「まり子さん」の言葉そのものである。
よって私は今、このアルバムのメインは、
「rainy street」
「夢って」
「色のたより」の3曲であると感じられた。
♪モザイクで作られた世界を生きて行く為に
希望へと 進むため 夢を見る
♪石の壁を割って強く咲いた 花模様
こんな切ない夢をみながら、「色のたより」では
君という言葉に高橋真梨子の姿を表現し、それを外から俯瞰する廣瀬まり子さんがいる。
優しいメロディの中に、コンサートシンガー高橋真梨子としてまた強く生きて行ける自信の光が見えてきている。そしてそれは、2020年の「やさしい夢」に繋がっているのだ。
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ラストは「ワンダフルナイトcinema」である。
別に真梨子さんは、人生を映画にはなぞらえていない。
どんなことがあっても「生きて行くこと」
そのひと言だけなのだ。
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だから、このアルバムにはconcertで歌う曲中心ではなくではなく、じっくりと聴いてほしいとの思いが込められている。アルバム制作現場の真梨子さん(まり子さん)がそこにいる。
そして、命を削って歌った素のまり子さんとコンサートの後にお目にかかる機会に恵まれたのは、ここから11年後のことである。
(2021/01/05記載)