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MELLOWLIPS
1985/9/15 NHKホールよりスタート
(C)THE MUSIX
コンサートのオープニングでまず感動するコンサートであった。
ぜひ皆さん聞いていただきたい。アルバム「我蘭堂」に収められているララバイシーガルである。
イントロが2つのパートに分かれている。
MELLOWLIPSのコンサートの幕開けは、
この2つのパートが見事に演出されていた。
最初のパートで、ヘンリーバンドのメンバーが一人ずつ乗っているトレーの側面が、様々な電飾の輝きで、まるでピアノの鍵盤、またはグラフィックイコライザーのインジケータのように、メロディに合わせて移動しながら輝いていくのである。もちろんレースのカーテン越しにその輝きだけが見える。そして、2つ目のパートになるとそのレースの幕が下から徐々に持ち上がる。イントロを聴けばわかるその変化である。明転したステージ上に、あの「高橋真梨子」を映し出していくのである。
1986/5/28 新宿 東京厚生年金会館
最前列の左端。予想していたとおりだが、スピーカーの音が割れて聞こえたが、それよりもなにも「NEWYORK NEWYORK」で、彼女がすぐ目の前で歌ってくれたのが嬉しかった。
「漂流者へ・・・」はドキドキして聴けなかった。今までなかなかチャンスはなかったが、初めて握手をした。
わりときゃしゃな感じだが、しっかりとした右手が自然に入ってきた。私の前で花束を渡したファンが何も言わなかったからか、『また観に来ます!』と言ったら本当に心の中から優しい声で『ありがとう・・・』といってくれた。そう、マイクやレコードやCDでは聴けなかった彼女の素の声を聞いたのだ・・・・・
今、Headphoneで聴いている。耳に「高橋真梨子」がなじんでいる。とにかく一生懸命生きている。歌っている。
細かいことが苦手なようで、とても細やかな感性がある。
とぎすまされたという言葉がよく似合う。
綺麗だった。髪が伸びたのでポニーテールのようにまとめていた。握手したとき、ほっぺたのふくらみと目の優しさが印象的だ。顔を見た、というよりシャッターを切ったという感じである。
少々かすれたあの優しい声も、その瞬間数秒間の世界に・・・・・その瞬間は、光があたり何も見えなかった。
まるで閃光のような、光に包まれた感じであった。
ララバイシーガル
ストライプ
フォローウィンド
陽かげりの街
OLD TIME JAZZ
デイブレイク
迷い鳩のように
想い出のSENZALA
蜃気楼
ジュン
NEWYORK NEWYORK
クロスワード
stop my love
桃色吐息
Brown Joe
漂流者へ
OVER
そこにいる高橋真梨子はもう別次元の存在である。あの、よみうりホールの過剰なお涙演出に耐えた新人時代から6年。
私のなかでの彼女の姿は、かっこいいお姉さんのままであるけれど、スターである。
アンケートに、いつしか真梨子さんと書いている。
なんと、<for you...>ですらセットリストから外す、徹底したコンセプトである。
「Brown Joe」がある。
「OVER」がある。
声のボリュームは凄い。低音のハスキーな男の子のような響き、高音の繊細で緊張感のある張り上げ。そして、少し力を抜いて響かせる安堵感。
80年代を代表するコンサートである。
ステージが違う。
照明が違う。
ニューヨークの摩天楼だ。
CMのロケは、お母さまやヘンリーさんとの想い出にもなる。
アンカレッジ経由の飛行機。
ふと見つけた鳩。
すべてが、これからの高橋真梨子を暗示した旅行でもあった。
摩天楼は、そのすごさは訪れてみないとわからない。自由の女神もである。
そして、
真梨子さんは8年後、音楽の聖に再び導かれる。
(MDF音楽館2007掲載文に加筆
2020/08/11 掲載)