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モノトーンの涙
2009/11/14 神奈川県民ホール
涙に色はあるのだろうか・・・
悲しい涙 切ない涙 別れの涙。 うれしい涙 孤独の涙。
アルバム「No Reason」はオトコごころでも、コンサートのコンセプトは「涙」である。「TEAR」で始まる高橋真梨子のスタンダードは、「涙もろいペギー」などゆったりと自分の生き方を思い起こさせる。
広瀬まり子さんは、よき妻であり細かいことのできるごく普通の方であろう。人見知りで、芸能界に友達は少なく、パーティなどにも出かけない。もう25年も前の新聞インタービュー記事で、「歌は仕事です」と言ってそのスタンスが異質なものとして取り上げられたことがあった。
コンサートには、ポイントになる曲がある。もちろんオープニングと、ラスト。しかし、2部が終わろうとするその前3-4曲目が、実は強弱のつけられたコンサートのツボといわれるところである。かつては、「フレンズ」や「Painter」「虹の水」など、印象に残る楽曲が多い。
もちろん今回は、「浪漫詩人」である。
白いドレスの「高橋真梨子」が真っ赤な炎の中で熱いシルエットを演じる。人見知りで物静かなというまり子さんとは正反対の強い女性である。まり子さんが、高橋真梨子というアーティストを見事に表現する瞬間である。
あの赤は、コンサートシンガーとしての自らの宿命に立ち向かう強さの表れなのだと思う。そこそこ歌がうまい人では、自己陶酔は出来ても人に感動を与え続けることは出来ない。みんなからうまいといわれ続けたまり子さんであればこそ、みんなが求める高橋真梨子の像に「歌は仕事」と言いたかったのかも知れない。
モノトーンの涙。
私はこの使命との対峙で流した涙は、あの「浪漫詩人」のライティングのようにモノトーンの涙であると感じている。
だから、真っ赤な炎とコントラストを創る。
二度とあの時のロマンをうたえない
逸る胸おさえても
歌いたくても納得できない、その心の焦り、急いた気持ち。
それはまり子さんにしか理解できない。
しかし、完璧を求めてその歌の主人公が流した涙を真梨子さんは表現し、かりそめのヒロインは歌の世界の中で相手を慕い続ける。
そう、それはとめられないもどかしい想いである。
stop my love・・・・
(C)THE MUSIX
アーティスト高橋真梨子というより、
高橋真梨子を演じる広瀬まり子さんが言う。
今を生きる、今の表現を聴いてほしい、今の高橋真梨子を聴いてほしいと。
高橋真梨子の世界、その名曲の涙
そのもとにあった心の葛藤の涙。その冷たい対峙を表現するフレーズがある。
階段をかけてく 誰もいないホールの
軽やかなる こだまを聞いている
最高のアーティストの孤独がそこにある。悔しいほどに響く靴音の反響音。
無色の涙、モノトーンの涙。
そんな まり子さん を私は応援したい。