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RIPPLE
1996.5.2 VICL-760
1.Lonely Subway
2.ごめんね・・・
3.ハッピーエンドは金庫の中
4.巴里の哀歌(うた)
5.多重人格
6.家へ帰ろう
7.Heart Breaker -波紋の渦-
8.日溜まりのWedding day
9.夜明けの走者
スピーカーをJBLからB&Wにして聴きなおしてみた。なるほどなと体感する。メリハリの効いたヨーロピアンサウンドに合うミックスダウンのチューニング。高音部のヌケがクリアに聴ける。
前作、PURE Connectionで、「高橋真梨子が高橋真梨子である」ツアーを行った真梨子さんである。低温の響きも高音の透明感もよい。
そのツアーのWOWOW放映で、ラストに流れた映像はビクターのある青山、表参道の交差点であった。
まるで、そのシーンを受けるかのように、地下鉄の駅から出てオフィス街、お洒落なカフェが並ぶような風景が見えてくる。
ある時は、雨の水たまりがあるかもしれない。そんな時に雨粒がぽつんと落ちて水の小さな波紋が広がる。そんな涙模様をイメージしたのか、タイトルは.RIPPLEである。
エレキギターとドラムスの響きが心地よいサウンドの1曲目の「Lonely Subway」。
「君と生きたい」もそうだが、地下鉄というとどうしても銀座線の表参道や、丸ノ内線の赤坂見附や四谷をイメージしてしまう。
地下鉄の窓に名もない人蔭がしっかりと映り込んでいるからだ。
96年の高橋真梨子は、「素」の高橋真梨子である。
そんなジャケットの真梨子さんは、パリの裏街の巴里の哀歌(うた)や、もしかしたらブローウエイで95年に再演されたCICAGOのような感じのする曲調「多重人格」で、夜の街で恋をする女を描いていく。真梨子さんのつややかなヴォーカルは、この音域でこんな色気のある歌い方ができるのだというくらい色っぽい。画像通りである。
96年当時の真梨子さんのヴォーカルがいかに際立っていたかがわかる仕上がりの2曲である。若い頃の声量をぶつけるだけの歌唱とは全く異なる。
しかも「家へ帰ろう」はブルースである。
なんといっても、「Heart Breaker -波紋の渦-」の完成度が高い。20年後のコンサートで歌われるときも、この音源を使用している。「ハッピーエンドは金庫の中」もファルセットになって、しかも8分の力で歌っていていい味を出している。
さて、こういう中での、真梨子さんの最大のヒット曲「ごめんね」である。現在はコンサートで聞き慣れ過ぎていて、しかもセットリストの関係で声を張り上げ過ぎないで自然に歌つているという感じに聞いてしまうのであるが、原曲はやや少し強めにエコーがかかっている。まるで歌詞の内容からも幻の世界に消し去りたいという仕上がりであることが体感できるだろう。実は「巴里の哀歌」のクリアなボーカルと伴奏とも対照的な仕上がりなのである。
「夜明けの走者」で真梨子さんの心情が語られる。
♬ 一人この道 迷って迷って そして この道 孤独の中に
振りむけば君がいる
カーネギーもロイヤルアルバートも外への展開。
でも高橋真梨子は、アルバムシンガーである。
自分の思いを強く出すのではなく、聴く人に心象風景が浮かんでくるような歌を歌いたい。そんな外連味のないストレートなシンガーである。
そう、この「君」は、廣瀬まり子さんから見た「高橋真梨子というコンサートシンガー」を指している。
でも、寄り添って君がいる の「君」は、
お気づきの通りヘンリーさんである。
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歌いたい歌の世界から、歌うことが使命となっている感覚を表現しだした
そんな1996年のアルバムであるともいえよう。
(2020/12/11記載)