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君はReality
(C)THE MUSIX/ VICTOR ENTERTAINMENT
2011/10/16 大宮ソニックシティ
松本公演の延期についてはまったく触れず、そしてそのことを知っている方が多いためか、FRUSTRATIONのイントロが始まるとみんな立ち上がった。真梨子さんのMCでの話を伺う限り、神経性の摂食障害になっていることが伺われ、「何か食べれるようになる薬が欲しい」と笑い話にならないことをおっしゃっている。
「ステージを降りることを自問自答することもある・・・」ということは、少なくとも数年前の真梨子さんならば口には出さなかった。「皆さんが元気をくれる、皆さんと会うと元気になる」というコメントも現実の話である。
感謝のコンセプトは、時として concert singer高橋真梨子をかなりのストレスの世界へ駆り立ててしまったようだ。そして、このMDF音楽館のレポートもその原因のひとつであるに違いない。
2008/7/20の東京国際フォーラムのコンサート日記のコメントで、私は真梨子さんの歌唱についてあえて辛口のコメントを掲載している。もうずいぶん前から真梨子さんは、その年齢での歌い方で表現するということをMCで言われていた。それを承知の上での僭越なコメントであった。もちろん、失望してファンをやめたわけではない。その後、松戸森のホールでのレポートのように、私の真梨子さんへの新しい恋は永遠に続いているのである。
そんな時期に、NHKのSONGS9/10と週刊朝日のインタビューで、真梨子さんご本人から、まるでご返事をいただいたかのような錯覚すら覚えるコメントが発表されている。
特に週刊朝日のインタビューでは、その要点を抜粋すると、「若いとき魅力的だった歌い方が衰えてくることがある、しかし、オリジナルを離れた歌い方、歌いやすいように歌う歌い方は、ファンも喜ばないと思うし、自分をごまかすことにもなるので、その年なりの歌い方で、包み隠さず表現したい・・・・」というコメントであった。
当時掲載したこの文章の文脈の中で、ここには語られていない事がある。
それは、私が入手した1982年の東京音楽祭の歌唱の様子の記録を真梨子さん本人にお届けする機会があったという事である。その記録の内容やお届けした方法についての詳細は避けるが、おそらく私がコレクターとして26年間追い続けた稀少な記録であり事務所も入手できないレベルのものであった。2008年夏の事である。
1982年の歌唱とは、「for you. . ..」である。その真梨子さんのもともとのfor youの歌唱は2008年当時の発声とはずいぶんと異なり、荒削りでぶつけるような唄い方だが、とってもパワフルで何かに飢えていた心の叫びを感じさせる。まさにアルバムDEARのfor youである。
そしてなぜか、SONGSでは、1993年のカーネギーのfor you...の映像を流した。そして週刊誌のインタビュー内容である。大変申し訳ないが、この空気感は私にしか解からない。
その後真梨子さんは、歌唱の仕方を変えて、「きっと」のところを強く大きく発声し空に突き抜けていくような透明感を演出してくれている。見事な変化だと思う。素敵である。と同時に大変のどに負担をかけていることも、体を絞るように高音を出していることも感じる。
広瀬まり子さんは、その歳なりの唄い方で包み隠さず表現したいと応えているものの、実はファンが求める高橋真梨子の姿にとても真摯に近づけてくれているのである。
そのために多くのストレスを抱えさせてしまったのではないだろうか。そして、アルバム「SOIREE」で、過去のコンサートからさかのぼってfor you...がDVDに収録されているのも、上記のことを踏まえてのメッセージなのであると感じている。
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そして・・・・真梨子さん、
今日の「for you...」は、一つ一つの歌詞が丁寧で、こんなに気持ちをこめて歌っていただいたことに 私はただただ感謝します。それが、真梨子さんが、FRUSTRATIONで語りかけた「君はReality?」の答え。
それは「私の今の姿を見て欲しい」という歌唱でした。
肩の力を抜いて、その緊張と安堵の瞬間は、ファンが求める高橋真梨子の世界で、「今の唄い方」を演じてくれているのだと言うことが強く心に響いてきました。
まり子さんへ
コンサートの回数が減ってもセットリストの曲目が減っても
keyを下げても、ファンならば納得すると思います。ご自愛なさってください。
多くのファンが今でも、「高橋真梨子さん」に恋をしているのですから。
(2020/12/07改訂)