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Hold me ,Rain

(C)THE MUSIX
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2020/12/07

真梨子さんが全国ツアーを卒業すると発表した今年、このレポートを読み返してみる意味はあると思う。

2011/11/19神奈川県民会館

大宮のコンサートから1ヶ月。真梨子さんの体調の悪さとコンサートの様子を垣間見るにつけて私は、真梨子さんは今年で全国ツアーを終了すると残念ながら確信していた。それは、まり子さん自身が「高橋真梨子」を表現できなくなっていると感じたからであった。だからこそ、今年のツアーは乗り切るのだろうと感じていた。
実際、真梨子さん自身も「できるかどうか」と自問自答したと思う。
しかしこの横浜のコンサートで私は確信している。そこにいたのは、「高橋真梨子」である。

私の感覚なので申し訳ないが、コンサートの中で私はある瞬間、メッセージを受け取ることがある。僭越な表現であるが、今年の川口のレポートをご高覧いただきたい。まったく初めて見たコンサートであるにも関わらず、あれだけのことを受信している。
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そして、今日、横浜で私はこんなストレートなメッセージを受け取った。
それは、Hold me , Rainの出だしであった。5月3日、この曲が試聴できたとき、そのキャッチーなメロディから真梨子さんらしさを感じ取ったのであるが、その後「美story」とのタイアップにより、不倫をイメージさせる大人の失恋を表現させるものとして唄われたと勝手に想像していた。

まったくの間違いであった。


孤独は常に 自分の中で
感じることで 誰も解からない
いつしか恋も 洒落た涙も
思い出せない 置き去りにした


真梨子さんは、孤高のアーティストである。周りにヘンリーさんとヘンリーバンドそして多くのスタッフに恵まれている。でも、いつも一人ぼっちでスポットライトを浴びているのだ。どう表現したらよいのかという純粋なアーティストとしての戦いがある。そして、今、体調の維持ができなくて、高橋真梨子を表現できない悔しさもある。
そして、今、続けるのかどうするのかの自問自答がある。

今まで歌ってきた「恋」や「失恋」の歌も もう今は表現できない・・・
でも、一人ぼっちでも、雨に打たれても前を向いて進んでいくのだ。
それを決めるのも、まり子さん自身、一人の判断である。

やはり真梨子さんは、無伴奏のヒロインなのだろう・・・

しかし、横浜のコンサートで、私の前には「高橋真梨子」がいた。それは、本当の意味での自然体の真梨子さんがいる。

私は、真梨子さんの自然体は、自然体であろうとする感性の鋭さがなせるもので、その感性に身を委ねる自然体であると評してきた。でも、今日の真梨子さんは、もう達観した自然体である。体調の悪いときだから、逆に力まず、緊張せず、ソフトに唄っている。
もしかしたら9割の力で唄っているというのが適切なのかも知れない。声を張り上げて体をよじることもない。

おそらく、真梨子さん自身が苦悩して出てきた歌唱法であると思う。本人も気づいていないかも知れない。
まり子さん、そう、今のfor you の表現でいいのだと思う・・・
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青を基調にしたステージの照明は、時として、真梨子さんに歌わせることを強いる冷酷なイメージに感じられる。
しかし、この今の自然体の歌唱なら真っ赤なスポットに変わる瞬間、
永遠の恋してやまないfor you...になり、
赤い恋の情熱の高橋真梨子の世界となった。

横浜の夜景が、雨に煙る。
電車の窓を、激しい雨が叩く。


孤独な真梨子さんが、「できるかどうか」ではなく、「どうやって」歌っていくかというひとつの壁を越えたように思えてきた。そんな事を、Hold me, Rain をヒントに、真梨子さんは感じさせてくれたのだ。

私は、たとえ真梨子さんがステージを降りたとしても、ずっと応援していく。
まり子さん、ありがとうございます。

 

SOIREE
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