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tip top
1997/09/26
VICL-60113
1.君の海に
2.Excuse me
3.黄昏まで
4.もうちょっと見つめて
5.無伴奏
6.Good-by Love
7.軌道
8.薔薇の女
9.不幸せになんか
10.海色の風~君住む場所へ~
1997/4/20 -
ニューオータニで、初めてのペーパームーン主催のファンの集いが開かれた。なぜか当日、最前列のテーブルにいた私は、当然フィルムカメラのアングルもよい位置でたくさんの真梨子さんの写真を収めている。もちろん病み上がりのどこと無く不安な表情の真梨子さんである。そのパーテイで、ヘンリーさんが、今年は香港のコンベンションセンターで杮落としのコンサートを行いますと発表された。
9/26にリリースされたこのアルバムは、当然そのことを十分に意識して創られているアルバムである。過去2回の海外公演のコンサート演目とは趣旨が異なると思ってよい。
香港といえば、ビクトリアピークから見る夜景である。
その頂上topから見る夜景の素晴らしさは、「とびきり上等」の意味のtip topそのものである。文字のデザインも、高層ビルが立ち並んでいるようなデザインになっている。
おそらく、このようなタイトル解説を発表した記事は、私が初めてだと思うが、まだ汗ばむ10月末の香港は、まさに夜景の街であった。
九龍側から見る、香港島の高層ビルの照明が時計がわりになっていて、このランドマークをみると「黄昏まで」 の世界に引き込まれる錯覚を覚える。
「Good-by Love」 は、趣のあるフェリーで対岸に渡るときの感覚がある。VTRではゴンドラになっていたが、海の街でもある。
解説リーフレットに掲載されている真梨子さんの写真の冷たい表情を見れば、「もうちょっと見つめて」が真梨子さんの日常生活のワンシーンからモチーフにされた作品であると容易に想像できるだろう。
「無伴奏」は、永遠の名曲。バイオリンの間奏がよい。この曲は、決してボレロではない。なぜか最近ボレロ風にアレンジされてコンサートで演奏されるのが、残念である。雨をテーマに沈んでよい曲だ。
「薔薇の女」は、「Heart Breaker」と曲調が被ってしまって残念な気がする。
「不幸せになんか」は、横浜の海辺の通り、神奈川県民会館から山下公園へのあたりを想起させた。この想いは、後に「ラストメール」で実現する。
そして「海色の風」は、同朋という意識で作成された曲。「無伴奏」と対極にある曲である。
(MDF音楽館2007掲載文)
4月にイベントで真梨子さんの様子を見ていたとはいえ、後年知るようなつらい思い辛い状態であるとは思わず、無事に復帰してよかったと思う気持ちで一杯であった。香港ツアーを1ケ月後に控えて、「海色の風」のサビの部分が、ヘンリーさんへの感謝のフレーズになっていることを誰より感じていたかもしれない。
10曲のアルバム。実は、前半と後半5曲ずつのコンサートになっている構成である。2007年当時の感想文では、「薔薇の女」が「HEART BREAKER」と曲調がかぶっていると書いているが、実はここはこれで良い。それは、神が決めた掟を破ってまでも愛したい激情の女に対して、愛し続けられない「冷たいとげのある薔薇の女」を表現しているからである。まさに画像そのもので、どうしてこんなに冷たい顔をしているのかというくらい、かっこいいとは別の表情である。その歌詞の中に、あなたを後悔させてしまうかのようなことしかできない、自分自身を責め続けている鬱の闇が少し強く出ているのである。そして、alone 単語である。
無伴奏も、間奏のバイオリンソロがポイントである。
それは、映画の中のワンシーンのようであるが、その時の生活そのものが、まるで仮初の日常であったのだから。
「不幸せになんか」なりたくない、
それは「横浜の海岸沿い」という言葉にも出ている。
ホテルニューグランドであり、神奈川県民ホールであろうか。
こういう恋愛詩の中に思いを潜ませて語る手法は、真梨子さんの世界観でもある。もちろん、各曲の完成度は高い。
そして、ふと感じるのは、2010年代後半のconcertのサウンドと思えてしまうことである。「海色の風」が何度もコンサートのエンディングに使われていることも、真梨子さん自身復活のアルバムとして位置づけていることに他ならない。
(2020/12/21記載)