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Triad 1984.09.21
Victor Entertainment
VIH-28187 VDR-45 VICL-5170
1.祥寺クィーン
2.モダン・デジャヴ
3.忘れない
4.背中から撃たないで
5.もいちどロマンス~街角物語
6.桃色吐息
7.トパーズの湖
8.新しい五線紙
9.HEART
第26回日本レコード大賞
HEART
ORIGINAL ALBUM
1984年は、カメリアダイヤモンドのCFに、「愛と誠」の池上季実子さんが洋風の着物で登場。荒波の打ち寄せる砂浜で風に吹かれているシーンに「桃色吐息」が流れてきた。
それは戸惑いである。
「マイクラシック」のHITで知られていた佐藤隆氏が、ギター一本で吟じていた曲が「桃色吐息」である。その中近東風の作風は、さらっと歌い上げるものであったが、真梨子さんは艶っぽくしかし妖艶にはならぬように歌い上げている。
相当の試行錯誤があったと思う。事実、真梨子さんも初めえっと思ったと回顧されている。
前述までのとおり、名曲もコンサートのラストナンバーもたくさんある中での「桃色吐息」である。また「祥寺クイーン」「忘れない」「新しい五線紙」など特徴的な曲も多い。しかし、コンセプトアルバムである。そのコンセプトはと尋ねられれば、それは「桃色吐息」なのである。そのパイレーツ風のジャケット写真の真梨子さんがどことなくあどけないし、確かにひとつの幅を広げた曲ではある。だから、曲のいい悪いではなく、私としての意見もを述べれば、「桃色吐息」は真梨子さんの曲のストライクゾーンにはないと思う。実際、私のオーディオで再生はほとんどしていない。
つまり、アルバムとしての収録曲の印象は、「Dear」や「AFTER HOURS」に較べると物足りない。
しかし、言葉を替えて言えば、歌唱法の幅の広がり、よりWET感のある柔らかいそして強弱のメリハリのある歌唱で伝えてくれている。音楽用語のtriadそのものである。
だからこそ、「HEART」が輝きを増している。
人は何かを演じている。
相手に気に入ってもらえるような存在になろうとしている。
しかし、実はそれは本当の恋愛ではない。
「高橋真梨子」が歌う失恋は、実は最後に主人公を新しい光に導いて救っていく。その世界観が存分に表現されているアルバムであるといえる。
なお、「HEART」が歌われている動画は、1984/12/31の日本レコード大賞の放送のみである。その2年後87年のBLUESetteコンサートでラストに歌われた。このFM放送の録音はある。88年のスプリングバージョン以降、コンサートでもTV放送でも歌っていない。
さらに、Bestアルバムにも収録していない。
そこには、真梨子さんの想いがある。
真梨子さんをメジャーにしたアルバム。
しかも実は少し自分の方向性とは異なるヒット曲。
その中の渾身のバラードである。
だから、アルバムの中で聴いてほしいと。
そして、コンサートツアーを卒業すると決めた2020年
「HEART」を「高橋千秋楽」に収録する。
この時間的な、扉を開けた真梨子さんの感覚を
「Triad」で体感してほしいと思う。
MDF音楽館2007掲載文章に加筆 2020/07/30*31記載