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ハート&ハード
1979/09/04 郵便貯金会館 芝
セットリストを見れば、なるほどと思ってしまう。
ところが、白文字の4曲は、リリースされていない時期なのである。「サンライズサンセット/もしかしたら」は12月のリリースだ。
「Sunny Afternoon」は、翌年の2月である。
このころは、頻繁にCMで「ハート&ハード」を流していたから、ある意味、高橋真梨子という存在が浸透してきていた。しかし、残念ながら、オリジナルが少ない。アルバムに収録する歌とコンサートで歌う歌。この壁がある。だから、翌年リリースする予定の曲を歌い込んで、既に披露している。
その分、真梨子さんのコンサートという色合いが出されている。つまり、「ひとりあるき」のコンセプトconcertでありながら、「ハート&ハード」のスペシャル版コンサートツアーである。
しかしながら、まだ洋楽のコーナーがある。
これでは、「追憶」のメインテーマ曲バーブラ・ストライザントの名曲が、メインになってしまっている。
今聴けば名曲なのに、当時はまだまだ模索している曲もある。また、日本語の歌詞を大切にしたいという真梨子さんの想いなのに、洋楽カバー曲を歌う歌手というもう一つのイメージの出るコンサートにもなっている。
しかし、純粋ラブソングの「マイドリーム」をアンコールで聴かせることのできる歌手は、当時のニューミュージック界にはいなかったし、それは、「萌芽」という言葉で位置付けられるのではないかと素直に思えてくる。
もちろん、まだ、当時の女性プロデューサーの意向は強く、真梨子さんとしてはまだ売り出し中の新人である。
(C)ホテルメルパルク東京
YOU'RE SO FARAWAY
五番街のマリーへ
陽かげりの街
ジョニィへの伝言
あなたの空を翔びたい
さよならのエチュード
もしかしたら
グッバイチャーリー
すべて霧の中
サンライズサンセット
HBP
小さなわたし
ハート&ハード
雨降りお月さん
竹田の子守歌
For The Good Times
Just the Way You Are
Lonely Hearts Club
Mamita Linda
マイ・ドリーム
すべて霧の中
陽かげりの街
あなたの空を翔びたい
(C)THE MUSIX
真梨子さんのことを長年温かく語って来たのは、音楽評論家の伊藤強氏である。ちょうど「Sunny Afternoon」をリリースした後に、伊藤氏がパーソナリティを務めるFM番組に真梨子さんが出演している。
その時の印象を、伊藤氏はこんな文章でまとめている。
一部をまとめて紹介すると、
「ソロ歌手としてようやく自信めいたものができはじめたように思える。もともと声は出る人なのだが、やはり声を出さなきゃという意識がちらりと見えていた。ところが、最近は、そんな気負いもなく自在な雰囲気が見える。高橋真梨子が漸く本来の自分を出し始めたと感じられるのだ。コンサートで、ラジオの収録で、『何かを乗り越えた』と思うのである。屈託のない明るさが身についた。とても素直な形で、ごく自然に自分の思いを外に出すことができている。
歌手は、表現者だ。しかし、それは、他の演技者と同じように、時には自分以外のものにならなければならない。もちろん、その時は、歌のヒロインをとらえるのは主観による作業なのだが、表現されるときは客観性を持たねばならない。その客観性は、自分自身がきちんと確立されていなければ、持ちえないものだ。高橋真梨子さんは、ようやくそのことを身に着けたと思う。
..............」(FMファン1980/4/17-23)
実は、このFMファンの記事のメインが、川上貴光氏著の「とびらを開けて」でも取り上げられた、「高橋真梨子は作曲をしないシンガーソングライターである。」という記事である。
過剰な演出はあれど、この「ハート&ハード」ツアーの成功によって、真梨子さんの曲作りやコンサート作りへの強い思いと提案が事務所に認められた。そして女性プロデューサーは担当からはずれた。
本当の意味で、新たな高橋真梨子の世界のスタートである。
そして、そういうときには、新しい邂逅も訪れる。
マネージャーの園田さんとヘンリーさんの前に、「若き作曲家」と「無名の作詞家」が登場してくるのである。
(2020/08/07記載)