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高橋千秋楽 感想①
高橋真梨子さんラストのベスト盤である。
当然ベスト盤についは、私は次のような視点でとらえている。
①真梨子さんは、アルバムの世界を表現してきたコンサートシンガーである。本来は、すべてのオリジナルアルバムを鑑賞したい。そのアルバムの中でのその楽曲の意味があるからである。
②48年のキャリアは、すなわち録音技術の進化を背景に考えなければならない。高品質なアナログ録音、デジタル録音もあれば、
ビクター独自のK2Mastering機能での録音。
当然、ヴォーカルと伴奏との録音トラック数の違いもある。録音レベルも異なる。
③CD化するためには、②の様々な違いをフラットにして、ミックスダウンしなければならない。
かなり大変な作業である。
そして、今回「高橋千秋楽」は、
④単純にほぼ10年ずつ選曲している。
⑤他のベスト盤と重ならないように選曲している。⑥新たに、リテイクした楽曲が入っている。
ということである。
聴いた印象では、おそらく皆さんのごく普通の16ビット再生のCDコンポを想定したミックスダウン。すなわち、ヴォーカルを引き立てている感じがする。いわゆる、低音高音を際立たせるドンシャリ系が少し感じられる。だから、音量を下げても明瞭に再生されている。しかし、アナログ時代の曲の自然な揺れが少し強調されてしまい歪み?のような揺れを感じてしまうところがある。あくまでも、私の感覚であるが。
もちろん、①なので名曲や、コンサートのラスト曲が突然出てくる。そして、やはりというか、少し残念なのであるが、曲間の余韻を残さず、すぐ次の曲に移ってしまうということがある。また、当然のことながら原曲のアナログ録音は、音像がステレオの中央に収集するが、デジタル録音は、楽器の位置がわかる広がりがある。
だから、こういうベスト盤は聴くのが本来は難しい。その意味で、オリジナルアルバムを繙いて(ひもといて)くださいというメッセージが込められているように思う。
(C)VICTOR ENTERTAINMENT
さて、左のような基本的な態度を整理して置いたうえで簡単にまとめてみる。
千趣会のオリジナルベストアルバム用にリテイクされた、「ジョニィへの伝言」「五番街のマリーへ」は、まだ真梨子さんが少し男の子っぽい低音を響かせる歌唱だ。低音を持ち上げるというより、その音そのものをストレートに出してくる。
「夢ゆらり/誕生日」を初めて聴いた方が多いと思うが、当時から知っている私としては、なぜそんなに注目されるのかと思うほどの、ドラマ主題歌である。正直、私のストライクゾーンにはない。
もとより、ドラマがかなり複雑な人間模様であり今の漫画や小説書き下ろしが原作のドラマづくりとは全く異なる時代だ。
私がずっとリクエストしていたからあえて書き込むが、「恋人たちの時間」がとても素晴らしい編曲に仕上がっている。
これは、「You're so far way」と昨年の「訪れ」同様に欧州風、フランス風にコンテンポラリーな曲調になっていて、真梨子さんの裏声も素敵だ。
ペドロ&カブリシャスのラテン系、当時のロック系、サウンドの中にあっても、この曲は異質なバラードであり新境地という感覚であった。それをさらに洗練している仕上がりだ。
また、「VOICE」収録のリテイクの「ランナー」ではなく、オリジナルを使っている。
「蜃気楼」もオリジナルである。
TVバージョンのアップテンポではない。
「アフロディーテ」も原曲が好きなので、この方が嬉しい。
まあ、この辺りも他のベスト盤との違いを感じ取ってほしいということだと思う。
2020/09/04